松沢呉一のビバノン・ライフ

大正時代にはダブルベッドの寝台車があった—寝台車物語-[ビバノン循環湯 179] (松沢呉一) -4,244文字-

花びら電車—鉄道を利用した売春業」では寝台車を利用した売春については詳しく触れてませんでしたが、これについて詳細に語った本があります。メルマガでやっていた「松沢式売春史」で取り上げたことがあるので、循環しておきます。「松沢式売春史」は売春史に関わる資料を取り上げる趣旨で、しばしば売春とは関係のない内容にも触れておりまして、そのままにしておきます。

 

 

 

寝台車物語

 

1)中島幸三郎著『寝台車物語』

発行所:松山書房

発行日:昭和32年4月25日初版発行体裁:新書 252ページ 定価:250円

 

2)中島幸三郎著『寝台車千夜一夜 ボーイだけが知っているカーテンの中の人生絵巻』

発行所:交通日本社

発行日:昭和39年4月5日初版発行

昭和39年5月10日再版発行 体裁:新書 224ページ カバー 定価:280円

渋谷東急の古本市で、それこそ電車の中で読むためのものとして、なんの気なしに2を購入。これが思わぬ拾いものであった。そこで、ネットで同じ著者の本を探したところ、1を発見。寝台車だけで二冊出すとは思いにくいので、2は新装か、改訂版だろうと想像できたが、安かったので購入。やはり2は内容がまったく同じ新装版であった。

※『寝台車物語』の書影はトレペがかかっているため、見えにくくてすいません。

 

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▼著者は鉄道記者。全編色っぽい話で、しかも、その多くは売春がらみ。かつて寝台車を利用した売春がこうも盛んだったとは驚き。

第一話「ダブル・ベッド異変」はさっそくストレートな売春話。 かつて鉄道省は、寝台車にダブルベッドを設置していた。大正初期がその最高潮の時代。料金はシングルのアッパースパースが一円五十銭、ローアースパースが二円五十銭なのに対して、ダブルベッドの夫婦同衾用は三円五十銭。だったら、二人がそれぞれアッパースパースの一人用で寝た方が楽だし、安い。それでも、これが大人気。セックスができるからである。

夫婦のみ使用できるということになっていたが、夫婦であることの証明が必要ではないため、誰でも使用できる。そのため、すぐに売り切れになる。

これに目をつけたのが大阪の待合の女将であった。十日先まで寝台券を確保して、芸妓とそのダンナに利用させた。移動待合となったわけだ。ダンナたちにとってみれば、移動中のことだから、誰かにバレることはまずない。女たちはタダで旅行をした上に、移動中にも花代をもらえる。

ところが、帰りは駅まで家のものが迎えに来ていることがあって、体をすり寄せながら降りてきたところを見られて一悶着が起きる。これを避けるために、行きは一緒で帰りは別々というのが定法となった。

 

 

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