松沢呉一のビバノン・ライフ

「憐れみ」の頭に「お」をつける—発音しにくい母音の連なり-[ビバノン循環湯 192] -(松沢呉一) -3,289文字-

国語辞典編纂者による「言葉から見る紅白歌合戦」のツイートが話題になってましたが、一連のツイートの中で、ここに私は注目。

 

 

そうなのですよ。発音しにくい言葉には、発音しにくい法則があって、理由もあるのです。そのことを考察した原稿があったことを思い出して、循環してみました。これは1998年に書いたものなのですが、未発表だったかと思います。

 

 

なぜ「お憐れみ」は言いにくいのか

 

vivanon_sentenceMOTHERからMを取ると他人です()。では、「あわれみ」の頭に「お」をつけると?

新潟のキャバクラ「ピンクパンサー」にいる時、どういうわけだか、このことを急に思い出して、新潟妻の春菜ちゃん(本人は新潟妻であることを知らない)に「“あわれみ”に“お”をつけると?」と言ってみたら、「おああ。アレ? おわわれい。アレ? おわわえい。アレ?」と見事なくらい発音できず、しばらく涙を流して笑わせてもらった。

その時横にいた喜多嶋舞そっくりで、格闘技好きのコ(名前忘れた)もしばらく「おわわわ。アレ?」を繰り返していた。春菜ちゃんより先に彼女は「おあわれみ」と言えるようになったのはいいのだが、全身に力を込め、拳を握りしめないと言えない様子がかわいくてねえ。

 

 

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