顔出し率調査・アイドル編—ビョークが主張する音楽業界のセクシズムは存在するのか? 4-(松沢呉一) -2,972文字-
「女性ミュージシャンは顔で売る?—ビョークが主張する音楽業界のセクシズムは存在するのか? 3」の続きです。
はっきり数字に差が出た理由
前回、数字を出してみて、それを見る限り、「日本のロック」という範疇では、男女で売り方に違いがあり、女子は顔出しをする率が高いと言えそうです。もちろん、ミュージシャンの数が少ないので、別の人が別の基準でやれば別の数字が出るでしょうが、同じジャンル、同じ基準でジャケットをカウントする限り、どうやっても男女が逆転するようなことはなさそうです。
「日本は特別」ということもあり得るかもしれないのですが、どこ国のどこのジャンルでも同じような性別による差が成立しているのであれば、「女子のミュージシャンは、ルックスを含めてレコード会社は売ろうとし、それによってイメージが作られやすく、どういう状況でも顔を晒すことを期待される。男でも同じことは起き得るが、女の方がより起きやすく、その差において音楽業界には性差別が存在する」とは言えるかもしれない。
その売り方がデフォルトであれば、「女のミュージシャンはルックスでデビューさせるかどうかを決定する傾向が強い」ということもあり得ましょう。ビョークも本当は顔を出したくないのにジャケットやPVで顔を出すことを強いられていたのかもしれない。
しかし、今回、音までをチェックしていく過程で気づいたことがあって、なお検討が必要。
女子バンドの音の傾向
女子バンドには傾向があって、音自体、ポップでメジャー指向が強いかもしれないことです。これは数値化が難しくて、あくまで印象に留まりますけど。
そもそも男女で音楽の指向性、あるいは自分がどのように認識されたいのかの考え方が違うとすると、売り方も違ってきます。
ON-Uからのリリースなので、今回は対象になっていないですけど、nisennenmondaiのようにメジャーで売れることを狙っていないであろう女子バンドもいて、ジャケットには本人たちは出てきません。聴く側にとってもどうでもいいことです。ミュージシャンの性別もさほど意識されないだろうと思います。「ガールズバンド」として扱われることはあんまりないでしょう。
どういうルックスであれ、あの音だと、どこのレコード会社も二の足を踏むはず。
一方で、カウントしたバンドの中には私の好きなtricotがいます。フロントのイッキュウは美人と言っていいでしょうし、キャラもいいのだけれど、ルックスで人気や評価を得たわけではない(たぶん)。声があるし、歌詞があるので、女子であることを意識して聴くにしても、ファンは顔はどうでもいい。とまでは言えないとしても、その比重は低い。
私も何よりその曲に痺れました。
最初に聴いたのはこの曲です。
映像として一番気になったのは、キダ モティフォです。動きがヘンでしょ。
tricotはインディーズ盤、メジャー盤を通して、顔出しをしてません。
つまり、顔を出すか出さないかは音の指向とも関係していて、現在の女子バンドは、見た目で売るタイプの音楽を指向しているのが多く、それがジャケットに反映されていると疑えなくもない。
続いてアイドル・ジャンルをカウント
別ジャンルを調べてみた方がいいかもしれない。
そこで今度はアイドルです。今も昔アイドルはルックスが重要であることに違いはない。では、男女差が出るのかどうか。
ロック・バンドと同じ条件でアイドル・グループを調べてみました。
調べ始めてすぐに問題が生じました。男部門はジャニーズ事務所所属アイドルを外せないですが、ジャニーズ事務所はAmazonでもジャケ写を出すことを許可していないのですね。すべて左のようなフォーマットで表示されるだけです。
商品パッケージについては著作権法を改正した方がいいとずっと私は言ってますけど、現状では、パッケージの著作権、あるいは肖像権を盾にすればAmazonに「ジャケットを出すな」と要請することも可能です。
ジャニーズの場合は、確実に買う層がいるし、なにより売り上げはコンサートとグッズなので、CDからの収入はさして当てにしておらず、Amazonでジャケットを見て買う人など不要ってことでしょうけど、出して損をすることもないでしょうに、なんでこんなことをしてんだか。
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