松沢呉一のビバノン・ライフ

「ちんぽ問題」から「まんこ問題」へ—『夫のちんぽが入らない』における「ちんぽ」の考察 2-(松沢呉一) -2,610文字-

「ちんぽ」絶好調—『夫のちんぽが入らない』における「ちんぽ」の考察 1」の続きですけど、『夫のちんぽが入らない』を読んでいないとわかりにくく、ネタバレにもなりかねないので、本を読んでから、以下を読んだ方がよいかと思います。 共感できるかどうかは人によりけりですけど、「こんな夫婦がいるんだ」とわかるだけでも読む価値があろうかと思います。

 

 

なぜ夫婦でちんぽが入らないのか

 

vivanon_sentence性器挿入ができない場合、ほとんどのカップルは結婚前に問題を解決しようとするはず。解消できなければ結婚しない判断をすることもあるでしょう。

『夫のちんぽが入らない』と『妻のまんこに入らない』」に書いたように、私はここが気になってました。だから、あのタイトルは「気になる」という意味で秀逸でした。「彼氏のちんぽが入らない」ではこうはならない。

この話題が出てきて、「いやいや、著者が言うように、挿入できない例を聞いたことがないなんてことはなく、そういうこともあるのだ」という意見が出てきていてますが、それは結婚がからまない場合でしょう。「『夫のちんぽが入らない』と『妻のまんこに入らない』」にもそういう例を出した通りで、いくつかの理由で挿入不全はそれなりにあることです。

結婚前にセックスをしないカップルもいるでしょうが、今の時代には、数は相当に少ない。なにかしらの宗教でも信じていそう。その少ない中で、結婚してから入らないことがわかるケースはさらに少ない。

「そんなことってあるかなあ」と訝しく思っていたのですが、本を読んだら、ある程度は納得しました。あくまで「ある程度」に留まりますけど。

夫は著者をおそらく処女だと思っていて、処女であることが原因だと思っていたら、いつか入ると楽観するのはそうおかしなことではない。自身、童貞ではないのですから、いかに大きくても、解決可能な問題であり、まさか二十年も引っぱることになるとは想像もしていなかったのでしょう。

妻は当然自分が処女ではないことを知っているわけですけど、なにぶんにも経験が少ないし、処女だと信じている夫に、過去の経験も語れない。ちんぽが入らないだけではなくて、そういう領域にズケズケと入っていけない男と女が、「いつかなんとかなる」と思ってしまったのです。そして、なんともなりませんでした。

 

 

 セックスのない結婚のありよう

 

vivanon_sentence「この人とは一生一緒にいたい」という相手がいる場合に、そのことが最優先されて、セックスが二の次になることはあるのだろうと思います。

性風俗店の社長で、結婚前も後も一度もセックスをしていないのがいることを前に書いてます。彼のところもその選択をしています。セックスはしなくていい、子どもも必要がなく、二人で生きていくのだと。

その社長の話を聞くと、十分に理解できます。自分自身のこととして考えると、「何も結婚しなくていいんじゃないか」と思うのですが、他人の選択として理解はできます。

そこにも書いたように、その社長は自身の夫婦関係を「親子のような関係」と言ってました。『夫のちんぽが入らない』では「兄妹のような関係」と説明されています。同じような表現をしているので、このフレーズを読んで、一瞬、「これはあの社長の妻が書いたのではないか」とも思ったりしたのですが、経歴も場所も仕事も全然違います。

血がつながった関係では自動的に家族ってことになりますけど、それがない赤の他人を制度の中で家族にするためには、結婚するなり、養子縁組をするしかない。

男女の場合は結婚するのがもっとも確実であり、結婚は一般的にはセックスが前提となりますが、それがなくても結婚を選択することはあっていい。合意があればいい。相手が同性愛者であることを知った上で結婚する例もあります。

結婚して何年かして、セックスをしたくなくなって、それでも維持される結婚もあっていい。過去にやっていたかどうかの違いだけで、それとそんなには違わないとも言えます。

※電車の中で増えていく付箋

 

 

「ちんぽ問題」から「まんこ問題」への変化

 

vivanon_sentenceその社長の店が歌舞伎町から消えて以来、十年以上、連絡をとっていないので、今も結婚生活が続いているのかどうかわからないですが、彼らの場合、最初から、セックスは家庭外でするものですから、やれ「セックスレスだ」「浮気だ」ということで揉めることもなくて、一般的な夫婦よりも、セックスで破綻する可能性は低いようにも思います。夫婦間でのズレはないんですから。その分、精神的結束は強そうですし。

しかし、『夫のちんぽが入らない』の夫婦の場合は、そこまで最初から割り切れていたわけではなくて、「できることなら入れたい」「できることなら子どもが欲しい」という状態が続いていて、問題を解消するため、文字通り血が出るような努力をして、かつ失敗し続けたために、「ちんぽ問題」がこじれていきます。

 

 

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