松沢呉一のビバノン・ライフ

レディコミに見る女の欲望—田中美津インタビューの疑問点 5-(松沢呉一) -2,800文字-

男と女が好むエロはどこがどう違うのか—田中美津インタビューの疑問点 4」の続きです。

 

 

 

宙出版のレディコミ

 

vivanon_sentence前回出した「アムール」以外にもエロ系レディースコミック雑誌は今も出ているのかどうか検索してみたら、出てますね。

ここに出した書影は宙出版の「姉aya」という雑誌です。「Young Love Comic aya」という雑誌の姉妹編らしい。

宙出版は『親なるもの 断崖』の版元です。わかりやすいですね。ああいう凌辱ものが女子に受けることを重々理解していたってことでしょう。

『親なるもの 断崖』はポルノである」シリーズを書いている時はここまで調べていなかったのですが、『親なるもの 断崖』を「児童凌辱ポルノ」とした私の見込みは版元からしても正しかったのではなかろうか。

当然、単行本も出しているだろうと思ったら、宙出版はエロ系レディコミを多数出版。最新刊は『ドSなオレ様彼氏が眼鏡をかけて迫ってきたら…』ですよ。

私も「アムール」を時々読んでいたように、こういうものを読む男もいると思いますが、読者の大半は女です。

田中美津さんの主張によると、あるいはそれを支持した人たちによると、AVと違って、ここには女たちが望むエロが詰まっているはず。

姉aya」と「Young Love Comic aya表紙に出ているコピーや作品タイトルを拾ってみると、「愛玩エロティック」「オフィスH」「社長とどSプレイ」「世界で一番ミダラな恋」などなど。これぞ女たちの望むファンタジー。

 

 

携帯配信でも凌辱ものが人気

 

vivanon_sentenceなぜレディコミでは無理矢理ヤラれる展開が好まれるのか」「なぜ自分の意思ではないところでセックスをする展開が好まれるのか」については「セックスを楽しみたいけれど、プロテクトがかかっているため、自分からは積極的になれず、不可抗力でセックスをしてしまったことにしたい」といった分析がなされていたものです。責任を自分がとらず、エロい自分を悟られることなくエロいことをしたいのです。

その分析が正しいのかどうかは知らんですけど、そういう分析をしなければならないくらいにそういうタイプの漫画がレディコミ雑誌には多かったのは事実です。

携帯配信の漫画はちらっと観たことがあるだけで、自分の目ではほとんど確認しておらず、私が知っているレディコミはずいぶん前のものですが、今もおそらく同じです。

女性向けの漫画を配信している会社の人にデータを教えてもらったことがあります。印刷物と違って、ここでは正確なデータがとれます。

登録時の性別記載によると、ユーザーは圧倒的に女子です(たしか9割以上だったはず)。アクセスは夜の11時頃から増え始め、ピークは12時から1時。要するに寝る前のズリネタです。その会社の人は「ズリネタ」ではなく、「オカズ」と表現していたかな。

わざわざ映画館に行って「エロスを高らかに謳いあげた作品」を改まって鑑賞するんだったら、演技力や脚本、音楽、編集といったところまで気になるでしょうが、布団に入ってからのズリネタだったら興奮できればそれでいい。であるがゆえに、ここにこそ欲望が生のまま凝縮されていると言えます。

内容も、雑誌のエロ系レディコミと同じ傾向があって、凌辱ものが人気。男の漫画家が女のペンネームで描いているものもあり、男向けの雑誌に描いたものがそのまま女子に受けることもあると配信会社の人が言ってました。

この会社は出版物にも関わっていて、編集者の多くも女性です。男の編集者が男の思い込みでそういうものを送り出しているのではないのです。

※Amazonで販売されているKindle版にもエロがいっぱいで、レイプもののレディースコミックもひっかかります。『レ●プの代償 弄ばれる私』というタイトルはエグいですが、恋愛ものも多数書いている漫画家さんで、好きな男に無理矢理されたという王道の展開のようです。

 

 

三角木馬 花嫁いじめ花弁なぶり

 

vivanon_sentence試しに検索をしてみたら、「めちゃコミック」というコミック配信サイトのレディコミ人気ランキングに入っている作品はそんなもんばっかり。

 

 

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