松沢呉一のビバノン・ライフ

「娘」と「女子」の関係—「女子」の用法 1-[ビバノン循環湯 223] (松沢呉一) -2,895文字-

予告編」に書いたように、これは2013年にメルマガに書いたものです。この原稿のテーマは「女子」「男子」を筆頭とした男女を区別する言葉についてです。雨宮まみの書いていたことは、頭の中にあるものをまとめるきっかけに過ぎませんが、これを最後に雨宮まみの文章は読まなくなりましたし、物書きとしての興味も失せました。これだけがきっかけではなく、それまでにもうっすらと感じ取っていたものを、「女の子よ銃をとれ」というシリーズで確信したと言った方がいいかと思います。

言葉を常に厳密に使わなければいけないとは全然思っておらず、むしろ私は社会が望む言葉遣いをしないことに共感があるのは「女言葉の一世紀」を読んでいただければおわかりになろうかと思います。日本の伝統だのなんだのを強調したがるタイプの人たちには「漢字くらい読めるようにしておけ」と言いますし、日本を代表して、伝統や作法について御託を並べる人に対しては「箸くらいちゃんと持て」と言いますけど、そうじゃなければアバウトでいいでしょう。

この一文においても、私はただ「物書きとして言葉に対する理解が甘い」と言っているのではなくて、誤用を指摘された時に、自身の甘さを棚に上げて、「批判する側のせい」さらには「社会のせい」にしてしまっているところに彼女の二番目の甘さがあると指摘している内容です。この二番目の甘さに重きがあります。最終回のまとめまでお読みいただきたい。

これを改めて「ビバノンライフ」に出そうと思ったのは、「女言葉の一世紀」に関わるためであって、亡くなった今になって雨宮まみを批判したいわけではありません。「女言葉の一世紀」が終わったら、これを出そうと思っていたのですが、いつ終わるかわからないので、先に出すことにしました。

その後、整理がついた部分については大幅に加筆訂正を加えていて、具体的な例も多数加えたため、えらく長くなってしまいましたが、趣旨は変わらず、時制は2013年当時のままです。

 

 

 

「女子」という言葉の理解と誤解

 

vivanon_sentence数カ月前に、雨宮まみの文章を読んで、「これは違うだろう」と感じました。反発されてしかるべき言葉の使用をしていることを自覚しないまま、安直な逃げをやっている。

以下です(※単行本にする際に、ネットで公開していたものをひっこめたようですが、平凡社のサイトでやっていた「女の子よ銃をとれ」という連載です)。

 

 

「女子」という言葉があります。いつの間にか、「女子会」や「○○女子」など、さまざまな場面で気軽に使われるようになった言葉です。この「女子」という言葉が流行り始めてから、ずっと言われていることがあります。

「何歳まで、『女子』とか言ってるつもり?」 「大の大人が『女子』なんて、図々しいし見苦しい」

実は「女子」という言葉は、辞書にもある通り、少女のみを指す言葉ではなく、女性一般を指す言葉でもあります。ですから、このような非難はそもそも的外れだと言えます。

しかし、一般的に「女子」が少女を指す言葉だという認識があるとしても、それを使う女性に対する批判は、かなり意地の悪い視線を伴っていると感じます。

女性が「女子」という言葉を使うときに、嘲笑混じりの批判を受けるのは、批判する側に「女は若いほうが価値が高い」という認識があるからではないでしょうか。そうでなければ「女子」を自称することに対し「図々しい」という言葉は出てこないはずです。単に「年齢に合わない言葉を使っている」「幼稚で見苦しい」というだけではなく、「若さという価値を失っている女が、価値の高い若い女を指す『女子』という呼称を名乗るのは偽装、許せない」という、強い非難のニュアンスを感じることもあります。

(略)

 

 

「女子」の二つの用法

 

vivanon_sentence「女子」という言葉に対する理解が浅過ぎます。その浅さを根拠に、言葉の使用を批判する人たちへの反論としていますが、前提が間違っているので反論になっていないのです。

この文章からすると、「女子」は「少女のみを指す言葉ではなく、女性一般を指す言葉」と認識していて、一般にある「少女を指す言葉」という認識は間違っていると思っているようにも読めます。それ以下は「もし〜だとしても」という仮想でしかない。

現実には、使用する場面で意味合いが変化をする言葉です。「少女を指す言葉だという認識があるとしても」という仮想は仮想ではなく、文脈次第では「若い女」に限定して使用する言葉ですから、正しい言葉の解釈です。正しい言葉の理解に間違った理解をぶつけて、的を外しています。

彼女が言うように、辞書にはこうあります。

 

 

 

 

男子」という言葉もほとんどこれと同じです。

 

 

結婚で区切られる言葉

 

vivanon_sentenceこの1と2の意味は使い分けられていて、雨宮まみが言うように、2も確固として使用されている用法ですが、雨宮まみは1の用法でも「女子」を使っていて、この場合は若い世代限定の言葉になります。国語辞典をちゃんと読むべきでした。

1に「むすめ」とあります。1の意味で「女子」を使う場合はそういう言葉なのです。

国語辞典で「むすめ」は以下

 

 

 

1の意味は「息子」と対になる「娘」、つまり親と子の関係を指すわけですが、2の意味は結婚と関係しています。

では、2の意味の「むすめ」は何歳くらいを指すでしょうか。

ザ・タイガースが「花の首飾り」を歌った時に、「花咲く娘たち」は何歳くらいを想定していたのか、受け取った側はどうだったのか。例が古いな。

 

 

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