松沢呉一のビバノン・ライフ

イラストの盗用・映画の無断上映の実例—社会運動における権利侵害を考える 1-(松沢呉一) -2,632文字-

社会運動の中で権利侵害があまりに多いことの問題

 

vivanon_sentence以下は、一昨日、Facebookに出した投稿です。この元になった投稿を見たい人は各自手繰ってください。

 

 

 

元投稿の人は、このことを公にすること自体になお躊躇があることが読み取れます。しかし、「もう我慢できんぞ」ってことでしょう。その気持ちは十分に理解します。

たとえば企業がポスターにイラストを無断使用していたら文句をつけやすい。どこかの出版社が雑誌や本で使用していても同様。イラストをそのまんま使っている場合は言い逃れようがないので、相手も丁重に対応するでしょうし、使用料も支払うことが期待できます。

でも、市民運動のチラシだと文句はつけにくい。入場料をとる集会、講演の類いもありますけど、原則、金儲け自体が目的ではないと見なされるのだし、複製する数も知れています。趣旨に賛同できる場合はとくに文句をつけにくい。

仮に文句をつけても、何がいけないのか理解できない可能性が高い。社会運動をやっている人たちの中には、「批判は得意だが、自分の非は断じて認めない。謝罪するくらいなら死んだ方がまし」というタイプの人たちがいるため、いよいよ嫌な思いをすることになります。わかっていない場合に、理解できるまで教えると、今度は時間が無駄になる。それを考えると、「まあ、いいか」ってことにもなります。

現にそうなってしまっていることが多く、だからこそ、こういう人たちは繰り返す。しかも、このケースでの無断使用は複数らしい。こういう人たちがいっぱいいるのです。

おそらくイラスト、文章、写真など、あらゆる表現物がこのような扱いをされていることが想像できて、多くの人がそれを表沙汰にしないだけです。「もう我慢できない」というところまで至らしめたことの重さをしっかり受け止めた方がいい。

 

 

映画の無断上映をする人々

 

vivanon_sentence上の投稿では「思い上がりだとは言うまい」と書きましたが、やっぱり思い上がっているのかもしれないと直後に思い直しました。

以下は今回のことで知人が書いていたことから知った一ヶ月ほど前のFacebookの投稿

 

 

 

 

投稿者は映画「大地を受け継ぐ」の監督で、市民団体はDVDを購入して上映している模様。DVDを購入しただけで上映していいって思えるのはおかしいでしょ。ただの鈍感、ただの無神経ってレベルではない。非常識で無知で図々しい。

以下の部分を読むと、その徒労感がよく伝わります。

 

 

今回はプロデューサーが連絡し、正式な上映会に切り替えてもらったが、何の反省もなかったというか、何が悪いの?という感じだったという。自分たちが「正しい」と思うことを主張するのなら、なぜ他のことに対しても「正しい」態度で接しないのか。

 

 

これを契機に反省をして、著作権の本を買ってきて勉強するとか、内部で学習会を開くとかしてくれれば救われますけど、その反省を表明することもせずに、自分らの無知、図々しさ、想像力の欠落を棚にあげて、こういう人たちは「あの映画の人たちはセコい」なんて言いふらしかねない。うんざりします。

 

 

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