松沢呉一のビバノン・ライフ

「男」「女」は犯罪者—「女子」の用法 7-[ビバノン循環湯 231] (松沢呉一) -2,448文字-

「女便所」から「女性用トイレ」へ—「女子」の用法 6」の続きです。

 

 

 

「女」と「女性」のグラデーション

 

vivanon_sentence今現在は後ろに漢語が来る場合は、「女性」をくっける傾向が強くなっていますが、古い言葉ではなお「女」を使用する例が残っています。

前回書いたように、「婦人」がつくものもありますが、職業名がつく場合はとくに「女」を使う傾向があって、「女弁護士」「女社長」「女代議士」「女経営者」「女組長」「女博徒」などがそうです。「女教師」「女医」「女店員」は女を「じょ」と音読みにして使用する。「女教師」は「おんなきょうし」とも言いますが。

今は芸者は女なので、使われなくなってますが。古いものでは「女芸者」というのもあります。これは男の芸者から始まったためです。

このうち「婦人」で置き換えられた時代があるのは「女代議士」くらいか。丁寧に言う場合は「婦人議員」でしたが、今はこれも「女性議員」でしょう。

一部、こういった言葉は残ってますが、今現在、「女〜」という言葉を使う場合、通常、個人を指して使いましょう。

「小学校教師のうち、女教師の占める割合は年々増加傾向にある」といった使い方はせず、この場合は「女性教師」です。検索すると、「女子教師」「女子教員」という言葉も使われていますが、「女性教師」「女性教員」に比べると圧倒的に少ない。どちらかと言えば若さに重きのある「女子」はもっぱら生徒に使用するため、そこと区別する意味合いがありそうです。

「女教師」は「息子の担任の女教師は〜」といったように、特定個人の性別を明らかにする場合に使用することが多い。

ここにもともとの「女」と「女性」という言葉の違いが残っています。本来は、きれいに差し替えられる言葉ではなかったのではないか。

こういう古くから使われている言葉を除いて、「女」は使いにくくなってきています。使うとすれば、「女の〜」です。「女教師」ではなく、「女の教師」「女の先生」。この場合は性別を意味するだけなので、あまり乱暴な印象は受けない。「女の人」も、「女」は性別であり、人を指すのは「人」なので、ただの「女」とは印象が違いましょう。これはまだいいとして、ただの「女」は使いにくいのです。私は使いますけどね。

※写真は新宿伊勢丹。売り場案内の言葉については「『女便所』から『女性用トイレ』へ」参照。

 

 

報道における「男」「女」は犯罪者

 

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明治時代と違い、現在、新聞等の報道では、また、警察発表では、「男」「女」は、多くの場合、犯罪者に使用されます。

 

 

 

 

被害者は「女性」、犯人は「女」です。被害者には丁寧な言葉を使い、加害者はぞんざいに扱う。「個人が特定されているか否か」も関係しているかもしれないですが、個人が特定されても、「犯行は三名の女によって実行された」といったように、「女」を使う。

いつから報道で「女性」という言葉を使うようになったのか、確定できてませんが、戦後ずいぶん経ってからのことでしょう。

 

 

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