松沢呉一のビバノン・ライフ

下目黒がブルジョア臭い?—高井としを著『わたしの「女工哀史」』のもやもや 25-(松沢呉一) -2,329文字-

文句言うなら著作権を理解しよう —高井としを著『わたしの「女工哀史」』のもやもや 24」の続きです。

 

 

 

下目黒を「ブルジョアくさい」とすることの不自然さ

 

vivanon_sentenceとしをの記憶は当てにならない。以降はそのことを確認していきます。

どうも変だぞ。細井和喜蔵が亡くなるまでの一年間の記述を読み直しているうちに、そう私は思い始めました。

あたかも貧しさのために和喜蔵や子どもが亡くなったような表現をしていること、改造社からの『女工哀史』の買い取り金が「たいした金額ではなかったのでしょう」と言っていることだけではありません

目黒区に詳しい人だと、下目黒について和喜蔵が「こんなブルジョアくさいところで暮らすのは飽きた」と言っていたことに「何を言っているんだ」と思ったはずです。私は思いました。

目黒区の全体像をよく知らない人だと、高級住宅街や高級マンションが並び、若者にも人気の街をイメージしそうです。それは中目黒から自由が丘までの東横線沿線のイメージです。渋谷区や世田谷区に隣接する目黒。それらの場所でも、ブルジョアくさいエリアだけではないですけど、豪邸や高級マンションが立ち並ぶエリアがあるのはそちら。

下目黒の最寄り駅は目黒線です。かつての目蒲線であり、品川区に隣接する目黒です。こっちの目黒とあっちの目黒は全然違う。

東京の人間でも「目黒に住んでいる」と聞くと、つい「いいところに住んでいる」と思うわけですが、目黒線沿線に住んでいる人は「誤解だ」と訂正をします。「うちの辺りは思い切り下町だよ」と。私もかつてそう訂正されたことがあります。

 

 

目黒不動尊と林業試験場

 

vivanon_sentenceよく駅名と実際の地名がずれている例として挙げられるように、目黒駅は品川区にあります。目黒線に乗ると、線路は品川区を走り、しばらくは駅も品川区ですが、その北部が目黒区。不動前駅の北部が下目黒です。そこをさらに北に行くと東横線です。

下目黒に何があるかと言えば目黒不動尊。参道の商店街には今も古い鰻屋や饅頭屋、おでん屋、立ち飲み屋などが並びます。亀戸の下町感とはまた違いますが、下町風情に満ちたエリアです。

 

 

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