三十代後半で「女子」「男子」を自称するか?—「女子」の用法 15-[ビバノン循環湯 239] (松沢呉一) -2,037文字-
「「女子力」は「娘力」—「女子」の用法 14」の続きです。
「女子」「男子」を個人に使う条件
前回見たように、性別を表す言葉では、しばしば大きい単位と小さい単位では指し示す範囲が違います。個人に向けた場合は、年齢との紐付けがなされる傾向が強まるわけです。
「女子」「男子」という言葉を大きくくくる用法としては、「男子校・女子校」「男子生徒・女子生徒」「男子部員・女子部員」「男子便所・女子便所」「男子社員・女子社員」「男子選手・女子選手」「男子競技・女子競技」「男子寮・女子寮」「男子更衣室・女子更衣室」「男子専用・女子専用」などがあります。
「男・女」「男性・女性」も広く集団を指し示すことができますが、「男子・女子」はよりグループ感が強い言葉だと言えましょう。
「女子」「男子」は、集団に向いた言葉であり、集団であってもしばしば若さに重きがあります。個人にスムーズに使えるのは二十代まで。三十代でも使いましょうが、はっきり中年層であることがわかっている場合は使いにくい。「男の子」「女の子」よりはもっと範囲が広いけれど、やはり年齢的な制約が生じる言葉です。
※先日出した学習院女子の門。昼間に通ったので、改めて撮ってきました。立派です。
輪郭がはっきりしない対象には使いやすい
私自身が書いた文章を検索してみました。その事情を説明してきたように、私は個人に「男子」「女子」を使うことが多いのですけど、その場合は、グルーピングが先にあるか、どこの誰かわからない人物、どこの誰かを説明していない人物に使いやすい。
5092号(※オリジナルの原稿を出したメルマガの号数)で私が書いた例。Rodyさんが撮っていた都庁前アピールの写真についてです。
男子の方は髪型や服装などにロッカーらしき特徴があって、知り合いだったらわかるかと納得したのですが、決め手は女子がもっているバッグでした。「どこかで見たことがあるな」というところから気づいたらしい。日頃から、「あら、素敵なバッグだわね」あるいは「こ汚いバックだわね」とでも思っていたのでありましょう。女の観察力です。 これに感心していたところ、あのカップルの女子からFacebookでメッセージをもらいました。
意味が読み取りにくい文章ですけど、意味はどうでもいい。「誰か知らない若い女」に「女子」を、「知ってはいるけど、誰か説明していない男」に「男子」を使用しています。年齢がはっきりしないながらも若くて、個人であっても輪郭はぼやけています。
彼らは二十代と三十代かな。この場合はとくにペアなので、「男子」「女子」を対で使いますが、この世代だったら、はっきり誰かわかっていても「女子」「男子」を私は使うことがあります。
※女子人気の高い京王プラザのハローキティルーム。この場合の「女子」は全世代を意味し、中高年お断りではないですが、中高年だけでこの部屋を使うことはあまりないでしょう。ちなみに私は泊まったことはなくて、この写真は知人が利用した時のもの。ピューロランドも一回行っておきたい。
三十代後半が「女子」「男子」を自称することの滑稽
以上のような制限があり、自称になるとさらに制限が出ます。
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