松沢呉一のビバノン・ライフ

メトロポリタン美術館と日本の美術館—著作権切れの著作物 上-(松沢呉一) -2,481文字-

 

 

メトロポリタン美術館の決断

 

vivanon_sentence高井としを著『わたしの「女工哀史」』は、面倒な条件が重なっているため、よーく読まないと何がどうなっているのかわかりにくいのですが、基本は簡単。「著作権は誰に発生するのか」「著作権継承者は誰か」「著作権保護期間はいつまでか」「買い取りとは」「著作権譲渡とは」といった基礎知識を押さえておけばいい。

今年の2月、メトロポリタン美術館がパブリックドメインのものを自由に利用できるようにした件も基本は簡単。メトロポリタン美術館の説明を見てもメチャ簡単。

ただ、日本の美術館がそれを実現するにはいくつかクリアしなければならないことがあるみたい。

以下の「朝日新聞」の記事はその辺を説明してくれています。

 

 

シェアに向けて 全国美術館アンケートから:下」はこちら

 

 

出遅れている日本の美術館

 

vivanon_sentenceメトロポリタン美術館はネットからダウンロードして、パブリックドメインの作品を高画質で誰でも簡単に利用できるようにしたってだけのことでありまして、私も今回さっそく利用させていただいてます。高画質である必要はないので、すべてSSです。とくに内容を吟味して使っているわけではなく、適当に使ってます。それでもいいのです。ブログでイメージとして使おうが、本の表紙にしようが、Tシャツにしようがすべて自由(パブリックドメインのものでも、人格権を尊重しなければならないことは言うまでもない)。

パブリックドメインの表示がなされているものだけですので、利用の際は必ずチェックのこと。著作者が亡くなった年を見てもわかります。37万点ありますので、何かしら使えるものがありましょう。

もともと著作権が切れているのですから、言われるまでもなくそうしていいのですけど、今まで美術館はそれに対して申請書を出させ、使用料を取ったり、利用目的や方法に制限を加えていました。

この記事にあるアンケートによると、今でも日本の美術館ではほとんどが申請を出させ、金を取り続けている美術館もあります。

けしからん話のようですが、著作権を根拠にしているのではなく、ブツを持っているため、そうする権利が美術館にはあります。

それをまとめたのが上の「朝日新聞」の記事ですが、この記事だけ読んでも正確にはわからんかも。

Giovanni di Paolo「The Creation of the World and the Expulsion from Paradise」

 

 

美術館にはそうする根拠がある

 

vivanon_sentence美術館にはそうする権利があるということをわかりやすくする例を出しましょう。あくまで仮想です。

 

 

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