松沢呉一のビバノン・ライフ

18歳未満とのセックスに関する法の正確な理解—セックスと言葉 予告編 1-(松沢呉一) -3,632文字-

10年前の忘年会での出来事—酒に薬物を入れられた? 予告編」に書いたように、第三者はセックスにまつわるトラブルについて触れにくい。両者の言い分にズレがある場合は判断がしようがない。これは司直の手に委ねるか、理性的に話ができる代理人を互いに立てて解決していただくしかない。

そう思って、小出恵介の件については「ビバノン」でもFacebookでもそれ以外の場でもここまで一切触れていなかったのですが、どうしても気になることがありまして、それについてかつて書いた原稿を循環することにしました。小出恵介の件はすでに相当まで事実関係が明らかになっているので、それについて前文で書いていたらえれえ長くなりまして、またも予告編として独立させました。それでも長いので、3回に分けました。本編より予告編の方が長い。

最初にお断りしておきますが、循環しようと思った原稿は淫行に関するものではありません。肩すかしをくらっても、私の責任ではありません。

予告編では、18歳未満を描いたと思われる名画の数々をメトロポリタン美術館の収蔵品からピックアップしてみました。あくまで芸術品を鑑賞するためです。

 

 

定例の淫行スキャンダル

 

vivanon_sentence男の芸能人が18歳未満とセックスをして芸能活動休止に追い込まれるのは風物詩みたいなもので、メディアはそれで活気づき、社会に向けて「18歳未満と不用意にセックスしてはいけない」「相手が合意してようと、喜んでいようと、条例に抵触することがある」「18歳未満に秘密はない」「とくに金を出していると絶体絶命。ただし、相手の年齢を知らなかった場合は別」という警告を発します。

時折誰かがその警告を出す広告塔にならないと、すぐに忘れちゃいますからね。

しかし、こういう機会にいわゆる淫行条例とはどういうものであるのか、自分が住んでいる場所、住んでいる場所じゃなくてもセックスをする場所の条例はどうなっているのか、児童買春とはどういう関係にあるのかを確かめて自身の知識としていった方がいいと思います。

自分自身がそうならないためだけでなく、そういうことをしてしまった人に対して、どこまで批判すべきなのか、あるいは批判すべきではないのかについての正しい判断ができるようにするためです。

法に抵触しているケースとそうではないケースとでは批判の内容も程度も違ってきます。その峻別なく、ただもう叩いて葬るようなことをすると、表沙汰にならないように黙って金を出すのが賢明ということにもなり、それを狙って金目当てで動く人たちが出てきてしまいます。場合によっては先々の金のためにセックスをする、つまりは売春にも近づく(売春そのものではないですが)。世間一般の善良な人たちの感覚としては、それを誘発するのはまずいのでは?

そうならないためには、正確に事を見極めた上で、法に照らし合わせる癖をつけた方がいい。それをせず、安直に他者の下半身に食いついて叩くのは、前川喜平に対する読売糞新聞の報道を支える一般の人々の意識とリンクもしていそうなので、注意しましょう。

Mather Brown「Portrait of a Young Woman」 またの名を「カラオケボックスでマイクを握る17歳」

 

 

小出恵介の場合

 

vivanon_sentence小出恵介のケースでは「小出恵介さんの事件について法的に違法でない可能性は十分ある-弁護士が解説」がわかりやすく法律面を説明しています。

法的に問題なしとの結論になる可能性も十分ある」という慎重な書き方をしていますが、今現在わかっている事実関係を見る限り、法的には問題がないと言ってよさそう。

これに補足しておきますが、この解説で触れられていないのは、大阪府青少年健全育成条例第三十四条の三号です。

 

 性行為又はわいせつな行為を行うことの周旋を受け、青少年に対し当該周旋に係る性行為又はわいせつな行為を行うこと。性行為又はわいせつな行為を行うことの周旋を受け、青少年に対し当該周旋に係る性行為又はわいせつな行為を行うこと。

 

この条文にある「周旋」は金銭授受のあるなしは無関係のようで、小出恵介の場合、セックスをすることを前提に、間に人が介在をしていた可能性があるので、なおグレーですが、これについては詳細がわからないので、ここでは触れていないのかと思います。

もうひとつ、第三十六条「夜間の連れ出し等の禁止」にもひっかかる可能性がありますが、親が承諾していればいい話です。ここもどうだったかわからないので、グレーのままの部分です。

以前説明したように、未成年者と一緒に酒を飲んだだけ、あるいは勧めたのだとしても、未成年者飲酒禁止法に抵触しませんので、これも法的には問題になりません。

以上のことから、法律に限って言うと、「周旋を受けて17歳とセックスをした可能性があることについてはけしからんかもしれない」「深夜、17歳を連れ回した可能性があることについてはけしからんかもしれない」ということになりましょうが、この2点以外は法に触れないと言ってよさそうです。

Philippe de Champaigne「The Annunciation」 誘惑も方法次第では淫行条例に抵触するので要注意。詳しくは以下参照。

 

 

そもそも淫行条例は妥当か否か

 

vivanon_sentence小出恵介の行為に違法性があるのかないのかの問題とはまた別レベルの話として、淫行条例自体が妥当か否かという問題があります。

 

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