松沢呉一のビバノン・ライフ

セックスを「寝る」と表現することのひっかかり—セックスと言葉 1-[ビバノン循環湯 288] (松沢呉一) -2,463文字-

 

では、予告編に続いて本編です。

小出恵介の件で私がひっかかったのは以下です。

 

 

 

 

相手になった17歳がLINEでやりとりしたとされるものですが、17歳でセックスを「寝る」と表現している点がひっかかります。「淫行」とはなんの関係もなく、ただ言葉として気になるのです。

私くらいの世代ではセックスの意味で「寝る」と言う人はいるかと思いますが、私自身は使ったことがない。だって、公園の暗がりで欅かなんかの木に手をついて後ろからパンパンパンとやって終わった場合、あるいは車の中で座位でやった場合、「寝る」って変でしょ。寝てないのに。また、男女でも、セックスなしで同じ部屋で、時には同じベッドで一緒に寝ることもあるわけですから、「寝る」がセックスの意味というのがどうもシックリ来ないのよね。

若い世代の女子ほど、遠回しの「アレ」「アソコ」なんて言わずに「マンコ」と言いますから、セックスを「寝る」と表現する彼女の語彙に興味を抱いた次第。住んでいる地域や属するコミュニティによっても違いましょうが、年齢が高い層と日頃彼女はこういう言葉を交わしているのではなかろうか。

では、私にとって、小娘たちがどういう表現をしていたらシックリ来るのかと言えば「セックスする」です。「エッチする」もしばしば聞きますし、「ヤる」も聞きます。一部の下品層ですけど、「食う」を使うのもいます。ここでの「下品」は悪い意味ではありません。むしろ、いい意味。でも、私の周りの若い世代で「寝る」と表現するのはほとんどいないように思います。

私は「ハメる」をよく使います。「ビバノン」でも頻繁に使っていますし、日常会話でも使ってます。やはり下品層ですが、女子でもこの言葉を使うのがいます。この言葉のどこが優れているのかを書いた原稿があるので、循環することにしました。これは1999年にポット出版のサイトで書いたものです。

「こんなもんのために、三回も予告編を書いたのか」って感じですけど、そうなのです。こんな長くなるはずではなかったんですけど、ここまでは前振りです。本編はそんなに長くない。

今回はメトロポリタン美術館収蔵の、喜多川歌麿の春画をあしらってみました。メトロポリタン美術館のサイトでは年齢制限等はなくて、誰でも見られるようになっています。芸術ですから。でも、私が使うのはどうなんだべ。あくまで言葉を論じているとは言え、文脈としては芸術ではなく、学術でもなく、エロ・エッセイですしね。こんなんで摘発されることはないにしても、Googleでアダルトサイトと認識されると、検索でひっかからなくなってしまうので、春画は有料部分だけにしておきました。そのため、今回は無料部分がほとんどありません。

ここに出したのはこれからハメるところでしょうから、大丈夫でしょう。

Kitagawa Utamaro「Parting of Lovers: Courtesan and Her Lover」

 

 

 

北海道と「ハメる」

 

vivanon_sentence札幌に行った際、馴染みの風俗嬢に会ったら、彼女はこう言っていた。

 

「またススキノのいろんなお店でハメてきたんでしょ」

「いやいや、そんなにハメちょらん」

 

「ハメる」という言葉を使う女たちもいるけれど、客に使う風俗嬢は珍しい。これは北海道だからではなかろうか。

 

 

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