松沢呉一のビバノン・ライフ

経営者の男女不均衡—性差別とされるものの中身 2-(松沢呉一) -2,883文字-

美容業界と性風俗業界を比較する—性差別とされるものの中身 1」の続きです。

 

 

無知を自覚できないくらいに無知な弁護士

 

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性風俗産業に対して、いったいどれだけの搾取率なのか、他業種と比較してどうなのかをこれっぽっちも調べず、考えることもなく、「搾取だ」と言えば批判した気になっている「搾取バカ」を前回取り上げました。家父長制道徳や宗教道徳、糞フェミニズムに頭を搾取されている人々です。こうやって適当に「搾取」と言えば批判になるらしいですよ。便利だなあ。なんの意味もないけれど。

性風俗店の経営は男が多く、働くのは女が多い不均衡を問題にするボケカスもいます。「不均衡バカ」です。

一般の会社も同じだろうが。一部上場企業の役員における男女比を調べたことがないのかよ。

客院の利用は圧倒的に女なのにもかかわらず、男の方が儲けている現実があるわけですから、なおのこと悪質という見方もできます(すでにその理由を説明してきたように、私はこんなことを言いませんよ)。

おっぱい募金」の際にも、性風俗の経営は男ばかりだと思い込んでいる弁護士とやりあいましたが、なーんも知らないでやんの。性風俗のこともAVのことも、ついでに風営法のことも知らない。

よくもまあいっちょまえの発言をできるもんです。無知を武器にするのはやめれ。その上、無恥が合体すると、ああなるんでしょうね。肩書きだけ立派で中身が空っぽであることを少しは自覚せよ。

その時に弁護士に説明したように、現実には、性風俗でも、小規模経営では女性経営者も多く、札幌の「ふきだまり」のように、地域によってはほとんどすべてが女性という例もあります。「視線と笑顔で決定する—飛田の女たち 1-1」で書いたように、飛田でも半数は女性経営者です。

業種にもよりけりで、SM関連は女性経営者が比較的多く、SMバーになると男性経営者よりも女性経営者の方が多いでしょう。SMバーは性風俗ではないですけど。

しかし、ソープランドとなると女性経営者は激減して、吉原でも片手で数えられる程度です。今は知らないですけど、私の知っている時代、私が会ったことがあるのは二人だけです。

 

 

小規模経営では女が多く、大規模経営では男が増える法則

 

vivanon_sentenceつまり、数名を使う小規模な経営においては女性経営者でもやっていけ、男性経営者より多いこともあるってことです。そこにこの社会の反映がなされています。社会全体のありようを改善するのはいいとして、ことさら性風俗だけが問題にされる理由などありません。

男の方が独立するのが早くて多いとは言え、美容院も女性経営は多いですけど、何軒もの店を経営するとなるとおそらく男の比率がさらに高まるはずです。

水商売も同じです。多数の在籍者を抱える大規模なキャバレーやキャバクラは男の経営者が圧倒的に多いですが、スナックやクラブは女の経営者がよくいますね。金を出しているのは別にいることもありますが、直接経営しているのはママです。

おばちゃんが一人でやっている文房具屋やタバコ屋があるように、小売業でも、小規模店舗では女性経営は珍しくなく、大規模になると男性経営者が多くなる傾向がここでも見られるわけです。

「不均衡バカ」はこれらも叩くしかないし、法で禁止することを求めるしかなくなります。どこの業種でもこういう傾向があるのに、他は無視して、風俗産業にのみ理想を押し付ける。

その弁護士さんに、弁護士もまた男の方が圧倒的に多いことを指摘したら、黙りこくりました。調べておけばよかったですね、そのくらい。検索って便利な方法があることを教えて差し上げればよかった。

 

 

上昇し続けていますが、それでもこの数字。このペースで増え続けるとして、男女比が同じくらいになるには、あと半世紀以上かかるみたいですよ。法曹界はなんという差別的な業界なのでしょう。解体すべし。なんてことをどうして言わないのかな。

男女の偏在にはさまざまな要因が関わるわけで、能力を正しく評価してもこの数字ですから、そんな簡単に改善できることではありません。

この偏在を支えている要因のひとつがパターナリズムであることは「パターナリズムが固定する差別構造-「おっぱい募金」批判の蒙昧 1」に書いた通り。「女はかよわい存在」という扱いを続ける限りは、この構造は改善されないでしょう。

 

 

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