松沢呉一のビバノン・ライフ

自民党と公明党の女性議員率の低さ—日本の女性議員率 3-(松沢呉一) -2,957文字-

都民ファーストの躍進で記録達成—日本の女性議員率 2」の続きです。

 

 

解決策は簡単、しかし、実現は容易ではない

 

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「どうやったら、議員の女性率を上げられるのか」の答えは出ています。候補者を増やせばいいんです。しかし、さまざまな要因が関わってくるので、実現は簡単ではありません。

この数字を上げるためにクオータ制度を導入するという発想をする人たちがいるのですが、まずは「どうしてこの数字が上がらないのか」をちゃんと検討した方がいい。たとえば10年といった単位で各党が「候補者を4人以上出す場合は最低1人は女性にする」といった努力目標を立てることはいいとして、無理に数字を上げると必ず軋みが生じます。

戦後間もなくの数字と比較して、「こんなに数字が変わっていない」と言われがちですが、現実には初の女性参政権が実現した時の数字を除くと、この四半世紀の間に急速に女性議員は増えてきているのですから、このまま徐々に増え続けていく環境を整えていくべきだろうと思います。

それを待たずに無理をやってのけたのが都民ファースト。都民ファーストはたいしたもんと私は思っているわけですが、それは「ともかく議員数を獲得して国政に進出する」という目的において忠実な戦略を立てていたって点と、見事に結果を出したって点です。それだけ。

「都民ファーストの会」というネーミングにしても、サイトの作り方にしても、広告代理店の関与がプンプン匂いますが、聞くところによると、小池百合子自身、そういうセンスがあるらしい。選挙はイメージが大事ってことです。それでいいのかどうかって議論は置くとして、そういうところで票は現に動いてしまうのです。

 

 

とくに今回の選挙では、「古い都政と闘う都民ファースト」というイメージ作りにおいて、若い世代と女性の候補ということを意識的にやったんだろうと思います。小池百合子が代表となっていたのもそのためでしょう。

しかし、プロ野球でもJリーグでも、即製のチームを作って試合に勝ち残れるかと言えば無理。都民ファーストの都議は、8割が新人です。男であれ、女であれ、ボロボロになっていくと思いますよ。

それでも、女性議員を増やすには女性候補を増やせばいいと見せたことは多いに評価すべきでしょう。

 

 

都民ファーストに寄与した左派市民運動の愚論

 

vivanon_sentenceこの戦略においては、市民運動系の人たちが言い続けてきた「戦争をするのは男」「女はつねに被害者」といった主張も貢献したことでしょう。都民ファーストの実像隠しに役立ったわけです。

私は大学生の頃から、「女の政治家が平和的なんてことはねえよ」とずっと言ってきましたけど、当時は社会党が比較的女性候補者を多く出していたため、あたかもそこに根拠らしきものを見いだすことができたのかとも思います。

しかし、このような言論は女から政治を遠ざけるだけです。意思表示もできない弱い人間に投票する気になれない。そんな弱っちい女たちが政治家になれるはずがなく、なっていいわけがない。

また、事実としても間違ってます。これについてはさんざん「ビバノン」でも指摘してきたわけですが、矯風会はもちろんのこと、婦人運動家が雪崩を打って戦争協力し、軍部に先んじて女子徴用を主張したことの総括がなされていないことが今なおこういったリアリティなき主張となっています。女たちは女たちの責任から目を逸らしてごまかし続けてはいけない。

政治家の女性率が低いことについても、ただただ男社会が悪い、性差別だと言い続けても解決しない。ここにも女たちの責任があるんです。

※第二次世界大戦後の世界において女性の政治家を代表する人と言えばマーガレット・サッチャー

 

 

各党の女性議員率を検討する

 

vivanon_sentenceおそらくクオータ制度の導入を主張する人たちは、「女性議員率がなかなか上がらないのは、女が議員になろうとしても男が優先されたり、その芽を潰されたりしている」と想定しているのだろうと思います。それがゼロとまでは言えないですが、主たる原因なのではありません。

 

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