松沢呉一のビバノン・ライフ

ホストクラブで一晩八十万円を使うソープ嬢—豪快女とトサンの女 上-[ビバノン循環湯 302] (松沢呉一) -3,931文字-

軽度は説教し、重度は放置が賢明—依存する女たち・男たち 2」の冒頭で触れた原稿です。2001年に「ナンバーワンギャル情報」の連載に書いたものなのですが、その段階では「後日談」はついていなかったはずです。「どうにもならないバカっ子」という例として出していて、イヤーな後味を残して終わっていたのですが、原稿を編集部に送ってから展開があったのです。説教してみるもんだなと。結局のところ、彼女の場合は軽度だったってことでしょう。その彼女の話は次回出てきますが、大変爽やかな後味になってます。

今回もエゴン・シーレでまとめてみました。メトロポリタン美術館の所蔵品を見ていて初めて知ったのですが、エゴン・シーレの作品には性器剥き出しのものもあって、やっとその作風が理解できた気がします。

 

 

それ、うちのコ

 

vivanon_sentence吉原にあるソープランドの社長がこんなことを言っていた。

「銀座のクラブで、ホステスがホストクラブに行った話をしていたんです。銀座のホストクラブですごい飲み方をしているのがいたそうです。ホストを何人もはべらせて、ドンペリを何本も空けて、一晩で八十万円使った。“あの飲み方は銀座のホステスじゃない。ソープの女だろうってホストたちと話していたんですよ”とホステスが言うのを聞いて、“こんな髪形で、こんな背格好で、こんな顔の女じゃなかったか”って僕は聞きました。そしたら、“そうそう、どうして知っているの?”って不思議がる。だって、うちのコです(笑)」

これには笑ったが、こういう豪傑さんはそうはたくさんいないってことでもある。こういう豪傑は、バブルが弾けた今、男にだってそうはいない。男の場合は、会社の経費で飲むのも多くて、経費が使えなくなったらそれまで。対してソープ嬢は、自分で稼いだ金を使っているのだから、豪傑度はこっちの方が高いとも言える。芸能人や野球選手で一晩に百万使うような豪傑と同じジャンルに属する。

バカな金の使い方だが、自分で稼いだ金を何に使うおうが勝手。こういうタイプは一人のホストに入れ込んで、金をむしり取られるようなことはあまりないかと思う。男をはべらせてばか騒ぎをするのが好きなのだ。ホストに貢いだ末に、やれ「騙された」「遊ばれた」と被害者面するおバカな女よりも、ずっとマシ。

しかし、おバカなタイプの方が風俗嬢には多いのがまた困ったもの。

キャバクラ嬢が言っていた話。

「私も毎日のようにホストクラブに行っていたことがある。知り合いがやっていて、安くしてもらえたので、飲みに行っていただけですけど。ホストは自分のタイプじゃないから、それ以上、ハマったりしないけど、やっぱり気持ちがいいですよ。普段はこっちがサービスしているのに、そこではふんぞりかえっていればいいんだから。同じような仕事をしているから、営業トークだってわかるんだけど、それでも悪い気はしない。そこのホストたちも言っていたけど、本当にハマるのは、風俗嬢だって」

日銭が入ってくる仕事はこうなりやすい。しかし、これも自分の生き方であるからとやかく言うことではあるまい。たいていは言っても無駄だし。

Egon Schiele「Portrait of a Woman」

 

 

豪傑タイプとおバカタイプ

 

vivanon_sentenceキャバクラに通い詰めて人生を狂わせるのがいたところで、「キャバクラはいけない」などと言うのはほとんどいやしないように、「風俗がいけない」「ホストがいけない」と短絡すべきではないのだが、なぜか、この世の中には、こういうことを言いたがる、もう一方のおバカがいる。

こういうおバカが好んで取り上げるのは、「ホストに食い物にされ、風俗産業で働かされてボロボロになる哀れな女たち」という物語だが、くれぐれも誤解のないように言っておくと、今時、ホスト狂いの風俗嬢ってホントに一部であって、多数派はホスト遊びを一切せず、するとしてもほとんどは健全に収入内で遊んでいるだけだ。そのソープ嬢だって、健全に収入内で遊んでいるグループに属していると言えなくはない。

ただし、ソープとなると、健全とは言いがたいタイプも増える。

その社長はこう語る。

「ソープでは、今でも男に貢いでいるのはたくさんいますよ」

 

 

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