借金してもホストクラブへ—豪快女とトサンの女 下-[ビバノン循環湯 303] (松沢呉一) -4,633文字-
「ホストクラブで一晩八十万円を使うソープ嬢—豪快女とトサンの女 上」の続きです。
言っても無駄な例
ほっとくしかないタイプの例をひとつ。たまたま取材で会ったのだが、話を聞いているだけでイライラする。
中学を出てから地元で工員をやっていたが、年齢をごまかして飲み屋で働き出す。そこで知り合った男とともに横浜に出てきて、彼女はキャバクラで働く。しかし、食費を除いた収入は男が全部もっていってしまう。男は当初「飲食店をやりたい」と熱く語っていたのだが、ギャンブルに手を出したのだ。
そのうち、さらに金を稼がせるために、彼女に風俗勤めをさせる。
彼女が入ったのは、老舗ヘルスである。
「みんな、本番をバンバンやっていた。ナンバーワンの子もやっていたみたいだよ。店がやれと言うわけじゃないけど、お客さんに“この店は本番やっていいんだよ”と教えられて、私もすぐに始めた。でも、その客、ひどいヤツで、私と本番したって言い触らして、次から次と本番目当ての客ばっかりが来るようになって、みんなと本番するようになってさ。指名してくれる常連とだけやっている子も多いんだけど、私は初対面でもバンバンやってたね。本番料金を五千円以上はもらっていたから、いいお金になるんだよ」
自分がやっているから「みんなやっている」と言いたがるだけではないかとも疑えて、実際のところは知らない。
店と関係なくやっているのだから、本番料金は全額彼女のものだ。この系列、たしかにバックが安くて、本番料金の方が高くなることもある。
「フェラもゴムの店だったから、ゴムはしっかりつけていたよ。ゴムがあると、女のコは本番をやっちゃいやすいよ」
こういう傾向は事実ある。生フェラのヘルスやピンサロで働くくらいなら、生で本番した方が安全という考えは正しくもあるし、本番の方が楽という子も多いものだ。
「でも、本番強要されて、生で中出しされた。それで、身分証明書をコピーして、写真も撮って、私は五十万円をもらった」
いくら普段本番をやっていると言っても、望まない本番を強要された場合は、これでいいのである。『風俗ゼミナール・お客様編』に書いたように、よく風俗店に貼ってある「罰金百万円」というのは、必ずしも脅しではなく、特に許可店では、本当にとることがある。たいていは百万円のうち、五十万円は店、五十万円は女のコの取り分となる。
「妊娠していたことがわかって、堕ろす費用は全部お店が出してくれた。前にも彼氏の子供を堕ろしているから、これが二度目。もらったお金の半分はホストクラブの掛けに使って、すぐになくなったけどね」
彼氏は結局夢破れて田舎に戻り、一人残された彼女はホスト通いをしていたのだ。
「ホストはキャバクラの時から行っていたよ」
「男がいる時からホスト遊びをしていたのか」
「うん。ホント私ってバカだよね、たいしたお金もないのにさ」
金のほとんどは男が持って行くため、残りを貯めてはホストクラブに行っていたらしい。
ヘルスで本番をやって稼いだところで、すべては右から左に流れていく。ホントにバカだが、自分でバカだとわかっている分マシで、「騙された」「男が悪い」なんてことを彼女は言わない。
※Egon Schiele「Reclining Nude with Boots」
ホストのために新たな借金
ホスト通いをするため、彼女はデリヘルに移った。横浜には多いのだが、このデリヘルは本番が前提で、こちらの方がより高い本番料金をとれる。ここはたしかに「みんながバンバンやっている」。
収入が増えたはずなのに、それでも金が足りない。
「掛けが溜まって、ホストの紹介で、三カ月前に今の店に移ったんだよ」
店長とホストが知り合いで、溜まった掛けが天引きになるのだ。かといってここの店長はホストにはめて働かせ続けようという気はなくて、彼女に金を渡すとすぐにホストに使うので、まずは借金を返済させる計画だ。
「だから、私には全然お金が入ってこない。客のチップがあるから暮らせているんだよ」
この店は本番店ではないのだが、どうやら今も本番をやっている様子だ。チップは本番料金である。
「掛けが三七万円くらいあったんだけど、私の計算ではあと二五万円くらいかな」
たいした金額ではない。デリヘルはプレイ時間が長めなので、一人当たりのバックが七千円として、少なめに見積もっても、一日二万は稼げる。半分が天引きされているとして、二ヶ月もあれば三七万円の全額を返せるはずで、利息がつくとしても、三カ月で十二万円しか減らないとはどういうことだろう。コンビニの店員をやってるわけではないのだ。あまり出勤がよくないのか、よっぽど悪い条件で働かされているのか。
私は「どういうことだよ」と聞いたのだが、要領を得ない。
(残り 2757文字/全文: 4742文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ