松沢呉一のビバノン・ライフ

男の性欲は下降・女の性欲は上昇—人は死ぬまでエロで苦悩する 上-[ビバノン循環湯 305] (松沢呉一)-2,920文字-

記録がないのですが、風俗雑誌の連載に出した原稿だと思います。中の記述から2005年くらいに書いたものです。最後に出てくる知人の歳からの推測です。この人はこの数年後に亡くなりました。わかる人には誰かわかりましょうが、イメージってもんがあるので、誰かは伏せておきます。

ちなみに私の場合は、その時の彼の年齢をとっくに超えてますけど、性欲の衰えをそのまま受け入れていて、とくに焦りもなく、苦悩することもない。人によりけりってことで。

図版はまたもメトロポリタン美術館から。性の苦悩を表現した作品をピックアップしてみました。一点のみ、「恋の病」を描いているので、限りなく近いですが、あとは適当。それでもそう思えばそう思えてきますから、アートって素晴らしい。

 

 

 

男の性欲曲線・女の性欲曲線

 

vivanon_sentence中学高校の頃、窓の外を走る体操着の女子の胸が揺れるところやブルマから伸びる太股を見ているだけで、授業中にチンコがギンギンになって困った体験がある男は多いかと思う。もちろん、個人差はあるにせよ、たいていの中学生、高校生の男たちは、やりたくてやりたくてしょうがなくても、やれる相手がいないことに苦悩がある。

男の場合は、十代でこの状態を迎え、やがてはセックスできる相手を見つけ、見つけられなくても風俗店に行くことで解消し、「セックスをしたいからする」という安定した状態を迎える。

ところが、女の場合は、歳を経るごとに性欲が高まる傾向がある。これも個人差はあるが、私の知人でも「子どもを産んで初めて性欲を自覚するようになった」と語るのがいたりする。

男でも環境によって性欲過剰になることがあるが、「三十代で初めて性欲を自覚するようになった」と語る人に会ったことがない。

これはオナニー実施年齢の調査を見てもわかる。小学校に入る前からする層は男女ともにいるのだが、男子は、それ以降、着実にオナニーをする率が上がっていって、中学の間にはほとんどがやっているのに対して、女子の上昇曲線はゆるやかで、初体験を済ませてから始める人、結婚してから始める人、子どもが産まれてから始める人もいる。

そのため、若いうちは、「自分はしたくないのに男が求めるからセックスをする」といったように、自分の性欲とはズレた状態でセックスをしがちだが、しばしば結婚して以降は、「やりたいのにやれない」というアンバランスな状態に置かれる。

奥様風俗嬢たちに仕事を始めたきっかけを聞くと、「残業がカットになって、夫の収入が減った」とか、「子どもの教育費にお金がかかって、生活が苦しくなった」とか、「私自身の遊ぶお金が足りない」とか、たいてい経済的理由をまずは口にする。

しかし、うち解けてくると、「夫とはセックスレスなんですよ。この仕事を始めた理由の半分はその解消ですね」「趣味と実益ですよ」なんて言葉も出てくる。事実、ほとんどの場合は金が直接のきっかけではあるのだし、世間体が悪いのか、最初から「欲求不満の解消」と堂々と言うのは少ないものなのだ。

Adriaen de Vries「Cleopatra」

 

 

週一でセックスしても「セックスレス」

 

vivanon_sentenceそれでもまだ本当のことは語られていなかったりする。この「セックスレス」というのも、世間体を気にした言い方だ。

セックスレスというと、「子どもができて以降、互いにその気にならず、半年に一回くらいしかセックスがなくなった」みたいな関係を想像するが、よーく話を聞くと、セックスはしているのに、その回数に満足していないだけだったりする。

「うちはセックスレスなんですよ。週に一回しかないんです」

「おいおい、結婚して十年で週に一回だったら標準的な回数だろ。むしろ多いくらいじゃないか。全然セックスレスじゃないぞ」

「いや、三日に一回はしたい。だって結婚当初は毎日でしたよ」

 

 

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