松沢呉一のビバノン・ライフ

稲田朋美の薄気味悪さ—今井絵理子は自民党にとって期待の星だった 上-(松沢呉一)-2,949文字-

今まで私が「いまさらながら金子恵美衆議院議員の公用車問題」「日本の女性議員率」で書いてきたことを読まずに、これだけを読むと誤解される可能性があるのでざっと説明しておきます。

金子恵美議員の公用車の私的利用はアウトとしか思えない。アウトの程度は低いとしても。しかし、それを擁護する人たちがいっぱいいて、擁護するメディアもいっぱいあって、「ああ、そうか、この国では、政治家の倫理や自覚よりも、母の都合が上位に来る国なのだな」と悟ります。

一方、都議会議員選挙を機に、日本の女性議員率について調べていくと、いくら「女性議員を増やせ」と言っても簡単ではなく、無理にそれをやると議員の質は低下していく。軋みなく女性議員を増やすには、政治家としての条件を満たす環境整備が必須であり、20年30年という単位の時間をかけてそれをやらないと、「女の政治家はレベルが低い」という評価が出てきてしまい、「だから女はダメなのだ」と短絡する人たちを増やすことにもなります。このところの自民党の女性議員を見ていると、その軋みがすでに出てきているとしか思えない。

これは自民党の問題だけではなくて、有権者の問題です。「日本の女性議員率」は重要な指摘をし続けていると自分では思っていて、私が言っていることが正しいかどうか私もわからないのですが、ただただ「女性議員を増やせ」の掛け声だけでは、今後もずっとこういうことが続くことだけは間違いがない。

なお、今井絵理子の騒動については「誰とセックスしてもいいだろ」と当初擁護する気満々だったのですが、報道を見るとダメっすね。公私混同がある点、噓がある点において、擁護できなくなりました。その事情は別項でやります。

 

 

丸川珠代の真意

 

vivanon_sentence稲田朋美は何から何まで薄気味悪い。辞任したあとまで薄気味悪い。何か決定的な欠落のある人としか思えない。

こんな人間を起用した政権も薄気味悪いし、長らく放置したのも薄気味悪い。

数日前に、Facebookでも取り上げましたが、この丸川珠代の発言も薄気味悪い。

 

 

「朝日新聞」デジタルより

 

 

稲田朋美の失言に次ぐ失言は、女だからダメだったわけではなくて、男でもダメ。なんでここで「女性政治家として」という枕をつけなければならんのでしょう。こういう枕が必然性を持つこともあるでしょうけど、ここでは意味がわからない。

でも、よくよく考えたら、自民党では、また、稲田朋美という政治家を語る際には、女という属性で見るのは必然性があるのかと気づきました。

丸川珠代が言いたいことを私が翻訳しますと、こんなところでしょう。

「自民党の女性政治家は、ただの政治家ではありません。つねに女性政治家であることを期待され、そここそを評価対象とされます。金子恵美議員の公用車の私的利用も、そういう党だから起きたことですが、有権者もメディアも自民党と同じく女として政治家を見ますので、うまいこと切り抜けたと言えます。稲田朋美先輩も、一議員としての能力を評価されて防衛大臣になったのではなくて、女という属性を評価されたわけです。なかなか辞任に追い込まれなかったのも女だからです。しかし、女であることの神通力も、これ以上は通用しなかったことがわかって、女として議員をやっている私としても残念です」

丸川珠代は大変正直です。

 

 

58歳の稲田朋美に「かわいそう」と言ってのける官邸の気味悪さ

 

vivanon_sentence稲田朋美がもし男だったら、とっくに責任をとらされていた可能性が高い。

今村復興大臣が辞任した直接の原因は、震災が「東北だったからよかった」というものでした。国会での発言でも記者会見でもなく、パーティでの発言です。

しかし、稲田朋美はいくら失言しても問題なし、虚偽答弁をしても問題なしだったのは女だからとしか言いようがない。背後に日本会議がいると言っても、結果、二度と浮上できないところに追い込んでしまっているのだから、その判断には誤りがあり、その甘さを招いたのは稲田朋美を女として扱ってきたからでしょう。

 

 

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