「母」を売りにしない候補者に投票を—(条件つきで)頑張れ! 豊田真由子 中-(松沢呉一)-3,165文字-
「豊田真由子が不倫していたとしたら—(条件つきで)頑張れ! 豊田真由子 上」の続きです。
「日本の女性議員率」はあんまり読む人がいないので、あちらでやろうとしていた続きはこっちで全部まとめることにしました。
豊田真由子と金子恵美とどっちが手本か
豊田真由子と金子恵美を比較することで、「金子恵美衆議院議員の公用車問題」で私が言わんとしていたことがわかりやすくなったかと思います。
将来、政治家にならんとする女子中学生なり女子高校生がいた時に、「夫が浮気をしても容認し、その夫に育児を担当させることもできず、毎日、子どもの送迎をやり、時には自身でベビーカーを押して徒歩で保育所まで送り届けながら、政務をこなさなければならないけれど、公私混同しても、子どもさえ持ち出せば世間の人やメディアが守ってくれる仕事」と、「国会議員になれば年間二千万円以上もらえて、ベビーシッターを雇うこともできるし、夫や親に育児を堂々と任せてることができて、自分は政務に専念することができる仕事」と、どっちが魅力的だと感じるでしょうね。
前者だと思うのもいるでしょうけど、そう思うような中高生の親は金子恵美を擁護しながら「娘は女子大に行くのが安心」なんて考えてますから、どうせ娘は女子大で英文学かなんかをやるわけですよ(この選択自体が悪いわけではないですからね。なぜ政治家を目指す女子が少ないのか、どうして目指しても挫折をするのかってことです)。
そんなのはほっといて、後者を「やりがいのある仕事」と思う女子こそ政治家になって欲しい。金子恵美より豊田真由子を目指して欲しい。絶叫と暴力以外。
豊田真由子タイプの国会議員が他にいないはずがないのですが、豊田真由子も絶叫・暴力問題が浮上したから、そんなことまでわかってきただけのことで、このタイプは家族を晒す必要がありません。晒したところで得をすることは何もない。むしろ、良妻賢母派の人たちに叩かれかねません。毎日新聞もこっちは守ってくれないでしょう。だから、そこを主張はしない。
※地元では真由ちゃんのポスターがどんどん剥がされているらしい。一枚欲しい。
家族を晒す候補者
一方、自ら好んで家族を晒す候補たちもいます。なぜこの人たちは晒すのか。
自民党だけでなく、選挙の際には「二児の母」なんてことをアピールする候補者がいます。私は「それがどうかしたか。そんなん、町内に百人くらいいるだろ。みんな政治家の資格ありかよ」としか思わないですが、現にこれで投票する人たちが少しはいるんだと思います。女子大出身では大学名を出しても意味がないですが、この社会では「母」が売りになる。まったく効果がないんだったら、家族のことを持ち出さないでしょう。
「子育てをしてきた母の立場から育児をしやすい環境を整備する政治家になる」というのは薄い薄い根拠がありますが、そんな意見は陳情なり、相談室なり、意見募集のサイトなりですくい上げていけばいいのだし、そんなことを売りにしていないだけで、子育てをしてきた国会議員はいますから、ことさら子育てを売りにする人材は必要がない。今井絵理子のように「障害のある」というフレーズがつくともうちょっと意味があるかもしれないとして。
つまり、ここまで「日本の女性議員率」で説明してきた政治家に適した環境から女たちが排除されてきた、ないしは女たち自身がその環境を避けてきたことが母の強調の背景にあるように思えます。
「女は政治や経済、法律に関心を持つ必要はない」という社会の考え方が、いざ政治家になる時にもまとわりつき、政治家になってさえも母を強いるのです。これを支持する有権者たちもいるため、候補者もそこをアピールする。
安倍首相が狙う改憲では家族の強化が盛り込まれているわけですけど、こんな国では受け入れられますわね。
※真由ちゃんも公式サイトのプロフィールには子どもがいることは触れてはいますけど、売りにはしてない。
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