プッシー・ライオットにどうしても女言葉を使わせたいNME JAPAN—世界のヴァギナ・デンタタ・バンド-(松沢呉一)
プッシー・ライオットのマリアがまたも拘束される
数日前からプッシー・ライオット関係のアクセスが増えてます。
「おまんこ暴動とおまんこ帽—プッシー・ライオットとプッシー・ハット」
「プッシー・ライオットは共感できるフェミニストである—強すぎ、逞しすぎ、闘いすぎ、そしてエロすぎ」
「プッシー・ライオットの新譜「Straight Outta Vagina」と女言葉の不自然さ」
「プッシー・ライオットの新曲「I Can’t Breathe」から読み取るべきこと」
「なぜ日本でのプッシー・ライオット支援イベントは失敗したのか-共振としがらみ」
細かいのは他にもありますが、いっぱい書いて来てます。
プッシー・ライオット関連のアカウントをFacebookでフォローしているのですが、ここしばらく「ビバノン」の記事を書く作業に没頭していため、Facebookもほとんど見ておらず。この件についても調べる気にならないまま放置していたのですが、マリアたちが一時拘束されたのがきっかけのようです。
「NME JAPAN」より
この記事は8月9日付けですが、抗議と拘束はその前々日で、外報では8日には取り上げられています。
以下は「ガーディアン」。
この抗議行動の動画。
古い映像も混じってますが、おそらく今回はナディアは無関係だと思います。最後に出ているのがウクライナのオレグ・センツォフ(Oleg Sentsov)という映像作家です。映像自体で逮捕されたのではなくて、テロを計画した容疑で懲役20年の判決を受けて服役中。
プッシー・ライオットに女言葉を使い続けるNME JAPAN
ナディアは単独行動になっていて、NMEの記事に取り上げられているMVもナディアのソロワークであり、マリアは演劇関係の舞台に出ているとの記事が以前出てまして、そちらもプッシー・ライオットと名乗っているので、ちょっと面倒です。もともとプッシー・ライオットは誰が名乗ってもいいものというコンセプトですから、全部がプッシー・ライオットですけど。
それはいいとして、相も変わらず、NME JAPANはプッシー・ライオットの公式アカウントから発せられたメッセージを「私たちはヴァギナを世界に披露できて、嬉しいと同時に誇りに思ってるわ」と女言葉に訳しています。これについては「プッシー・ライオットの新譜「Straight Outta Vagina」と女言葉の不自然さ」を参照のこと。
あの時の記事をそのままコピーしたのでしょうけど、いい加減におかしいって気づけよ。気づいたら修正しろよ。
これはただ単に「今はほとんど使われなくなった女言葉を使う不自然さ」という問題ではありません。
ヴァギナ・デンタタのメッセージ
プッシー・ライオットが闘っているのは家父長制(patriarchy)であったり、それに基づくパターナリズム(paternalism)だったりします(どちらも父の意味のpaterが語源です)。
その家父長制道徳の言葉が「女言葉」であるというのが「女言葉の一世紀」で論じ続けていることです。
その言葉をよりによってプッシー・ライオットが語ったかのように扱える神経がわからない。
ナディアが自らヴァギナ・デンタタを踏まえて、歯の生えたマンコ、言葉を発するマンコたらんとしているのに、そのマンコから発せられる言葉が女言葉ってあり得ないでしょ。ここでは不良の粗暴な言葉、あばずれの猥雑な言葉が相応しい。
マンコから発せられる言葉が上品な女言葉というのも黒木香的で面白いですけど、なんたってプッシー・ライオットですよ。オマンコ暴動ですよ。
その意味を踏みにじるような女言葉の使用なのです。
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