松沢呉一のビバノン・ライフ

車椅子で入れる店もあるのだけれど—スカーレットロード [4]- (松沢呉一) -2,553文字-

性風俗店が障害者を断るケース—スカーレットロード [3] 」の続きです。障害者の話が続きますが、障害者とセックスワーカーの関係を論じたいのではなくて、「国によって法が違う。業態が違う。文化的背景が違う」ということを論じたいので、誤解なきよう。「スカーレットロード」自体、広くセックスワーカーと障害者の問題をとらえたものというよりも、あるセックスワーカーとその客の関係をとらえたものです。

 

 

車椅子の支障

 

vivanon_sentenceコミュニケーションの問題、そして、もうひとつの問題は車椅子です。物理的に対応ができない店があります。外国人ならなんら問題のないストリップ劇場でも、階段がある、通路が狭いといった理由で車椅子は断る場合があるでしょうし、通路が狭いため、「一番後ろの壁際だったら」といった条件をつけることもありそうです。

吉原のソープランドは路面店がほとんどなので、店の前に車がつけられますし、豪華さを売りにしていますから、通路が広く、エレベーターもついてます。プレイルームもまあまあ広い。風呂はゆったりとした浅い浴槽が多いため、比較的車椅子の障害者でも入りやすい。

わずかな移動だとしても、女の腕で抱え上げるには体重がありすぎる人もいるので、そこまで介護の人が付き添ってくれる場合はOKになっている店もあります。

前回出てきたお母さんもそうですけど、そういう人がいるかいないかで、行動できる範囲は大きく違ってきます。

吉原の高級店に来ているのは、十分な収入を得ている人たちが中心です。じゃないと、四万も五万も払えないですから。よくわかっていない客の中には「障害年金で来ているのかよ」と腹を立てる人もいるかもしれないですが、吉原だと待合室がふたつある店も多いので、他の客と出くわさないようにすることも可能です。実際にそうしていると言っていた店があります。

金額的にそもそも吉原の高級店に行ける人は限られますが、ヘルスだと、車椅子に対応できない店が多い。店がビルの中にあって、エレベーターがないとか、エレベーターが中二階にあるとか、エレベーターが小さくて車椅子が乗れないとか、店の通路が狭くて通れないとか、待合室に入れないとか、プレイルームに入れないとか。

※「Decriminalise Sex Work, New South Wales」より。この人は「スカーレットロード」にも出演しているセックスワーカーです。Scarlet Allianceにはゲイやヘテロの男性セックスワーカー、トランスジェンダーのセックスワーカーも参加しています。

 

 

エレベーターがなくても受け入れてくれる店はある

 

vivanon_sentenceかつて歌舞伎町にあったヘルス「リッチドール」は、ビルの、たしか三階で、ここもエレベーターが小さくて車椅子が乗れなかったのですが、車椅子の常連さんがいました。彼が来ると、下まで従業員が迎えに行き、車椅子は一階に置き、おんぶしてエレベーターに乗り、以降も従業員がおんぶして店内を移動。指名する相手も決まっていて、その子も慣れていたので、なんの問題もなし。

 

 

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