松沢呉一のビバノン・ライフ

時代に取り残される東北芸術工科大学—続々・著作権切れの著作物-(松沢呉一) -3,247文字-

引用まで許諾がいると主張する東北芸術工科大学—続・著作権切れの著作物」の続きです。

 

 

 

昨今の動き

 

vivanon_sentence昨今、日本でもクリエイティブ・コモンズに基づいてデータを公開しているところが出てきています。

たとえば以下は大阪市立図書館が公開しているアーカイブの「二次利用について」。

 

 

 

 

以下はその具体例。

 

 

 

注記/注釈」の部分に「CC-BY」が入っています。著作権が切れている、ないしは著作権者が利用に合意していることがわかり、この絵葉書はクリエイティブ・コモンズのルールに則り、商業利用を含めて自由に使うことができます(これは著作権に関するルールであり、パブリシティ権・肖像権・人格権はこの範囲に非ず)。著作権切れの場合はクリエイティブ・コモンズに則るまでもなく利用可です。

ちなみに、この絵葉書に写っている大阪築港大潮湯は大正三年から昭和九年まであったスーパー銭湯みたいなものです。夕刊大阪新聞社編『大阪商工大観. 昭和4年版』に詳しく出ています。夏になると、一日三万人が入場とあるので、巨大娯楽施設です。ここに海水を使ったプールがあって、上の絵葉書で遠くに見える女たちは全裸です。私の興味は水着なので、全裸に興味ありません。脇毛が見えていれば別ですが、拡大してもわかりませんでした。

 

 

写真の著作権

 

vivanon_sentenceメトロポリタン美術館もパブリックドメイン表示がなされているので、どの作品の著作権が切れているのか、自分で調べなくてもすぐにわかります。

東北芸術工科大学東北文化研究センター アーカイブス」はその表示がないため、自分で判断するしかない。それを判断した上で、黙って利用してよし。

写真の著作権についてはWikipediaがコンパクトにまとめてくれています。

 

 

写真の著作物の保護期間は、1899年7月15日に施行された旧著作権法では、発行後10年(その期間発行されなかった場合は製作後10年)と規定されていた。その後は、以下のような変遷をたどっている。

  • 1967年7月27日 – 発行後12年(未発行の場合は製作後12年)に延長(昭和42年法律第87号、暫定延長措置)
  • 1969年12月8日 – 発行後13年(未発行の場合は製作後13年)に延長(昭和44年法律第82号、暫定延長措置)
  • 1971年1月1日 – 公表後50年に延長(著作権法全面改正)
  • 1997年3月25日 – 著作者の死後50年に変更(WIPO著作権条約への対応)

上記によれば、1956年(昭和31年)12月31日までに発行された写真の著作物の著作権は1966年(昭和41年)12月31日までに消滅し、翌年7月27日の暫定延長措置の適用を受けられなかったことから、著作権は消滅している。また、1946年(昭和21年)12月31日までに製作された写真についても、未発行であれば1956年12月31日までに著作権は消滅するし、その日までに発行されたとしても、遅くとも1966年12月31日までには著作権は消滅するので、1967年7月27日の暫定延長措置の適用は受けられない。したがって、著作権は消滅している。いずれの場合も、著作者が生存していても同様である。

 

 

あくまでこれは写真についてです。絵を使用した絵葉書、絵と写真を組み合わせた絵葉書は別ですので、注意のこと。

写真については戦前のものは言うに及ばず、昭和31年中までに発行されたものも著作権はとっくに切れています。この時代、写真は発行から起算なので判断が楽です。

ただし、このアーカイブではいつのものかの記載がなく、著作権が切れていないと判断できるものが混じってますから、各自、その同定をする必要があります。

 

 

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