松沢呉一のビバノン・ライフ

ホワイトハンズは合資会社百識のリメイク—ホワイトハンズの何が問題か[3]-(松沢呉一) -3,325文字-

セックスワークサミット出演を断った事情 2—ホワイトハンズの何が問題か 2」の続きです。

 

 

 

本を読み終えていないながら批判スタート

 

vivanon_sentence風邪をひきつつ、TOKYO AIDS WEEKS 2017の準備が続き、先週の土日はTOKYO AIDS WEEKS 2017で潰れ、月曜日は韓国のGiantGirlsの観光ガイドをしていて、それ以降は「HIV・エイズに関する動画史」をまとめていたため、まだ坂爪真吾の著書の一冊も読み終えていません。

新書ですから、とくに何も考えずに読むのであれば、すぐに読める内容ですが、気になることが多くて読み進むのが困難である上に、面白いものではないので読む気がしない。他に読まなければならないもの、読みたいものがいっぱいありますし。

文章上の彼の手法や彼のやりたいことはすでにだいたいわかったので、これ以上調べる必要もないだろうとも思えて、いまひとつやる気がしないということもあります。小物なので、ドクター中松ほどにも調べる衝動が起きないというのもあります。

これをやり続けたところで、今までホワイトハンズに協力してきた人たち、ヨイショしてきた人たち、ともに活動してきた人たちが、自身で検証して、自己の、また、坂爪真吾の問題点を抽出する作業をし、それを表明するようなことはあまり期待できそうになく、せいぜいのところ黙って距離を置いて黒歴史をなかったことにする程度でしょう。

世の中、そんなもん。そんなもんだから、坂爪真吾みたいなものをヨイショしたり、ともに活動ができるわけです。

「どうやらまずいみたいだぞ」と察知して距離を置くのが少しでも増えればよしとするしかなくて、そのためにはそう丁寧な検証をこっちがやる必要もなくて、今現在わかっていることをお知らせするだけでも十分かもしれない。今わかっていることだけでも、坂爪真吾はハッタリを積み重ねるだけの、まったく信用がならない人間だとわかるはずですから。

結論めいたことを先に書いておくと、ホワイトハンズは合資会社百識の失敗を踏まえてそれをリメイクしたものです。百識の活動を検討していくと、ホワイトハンズがやっていることがよく理解できるので、ここだけ明らかにしておけば十分かと思います。

 

 

手始めに『セックス・ヘルパーの尋常ならざる情熱』

 

vivanon_sentence最初の著書『セックス・ヘルパーの尋常ならざる情熱』(小学館/2012)より、その略歴を見てみましょう。

 

 

1981年新潟生まれ。東京大学文学部在学中に、性風俗産業の研究を行なう過程で、「関わった人全員が、もれなく不幸になる」性風俗産業の問題を知る。同大卒業後、性に関するサービスを、「関わった人全員が、もれなく幸せになる」ものにするために起業。2008年、「障害者の性」問題を解決するための非営利組織「ホワイトハンズ」を設立した。現在では全国18都道府県でケアサービスを提供している。

 

 

性風俗産業を「関わった人全員が、もれなく不幸になる」と断ずるのは「そうであれば都合がいい」という願望に過ぎません。このことはいずれ検討しますが、坂爪真吾は性風俗に関わっている人たちを「不幸な人々」であり、「自分が救ってやる」と思っていることをここでは確認しておきます。

こんな中味のないことを書いている人物をよく信用する気になるなと私は思うのですが、こういうことを書くからヨダレを流しながら食いつく「弱者萌え」「不幸萌え」の人々が多数いるってことなのだと思います。

【同大卒業後、性に関するサービスを、「関わった人全員が、もれなく幸せになる」ものにするために起業】とありますが、これはホワイトハンズの前ですから、合資会社百識のことです。

しかし、この本には、あるいは他の本にも、百識の名前は出ていないようです。私もこの名前は熊篠慶彦に教えてもらって知りました。なぜ社名を出していないのかは、この会社の活動を見ればわかります。現に私がそうしたように、社名がわかれば相当のことがわかってしまいます。

 

 

百識設立まで

 

vivanon_sentence社名は出していないながら、百識での活動についての説明は本文でそれなりにはなされています。

 

 

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