松沢呉一のビバノン・ライフ

「楽しかった」で終われない—TOKYO AIDS WEEKS 2017にて[1]-(松沢呉一) -2,413文字-

アジア編 7/NSWP代表・ケイティさんが語る現実—HIV・エイズに関する動画史[12]」から続いています。もっと早く出したかったのですが、「ホワイトハンズ問題」に取りかかったため、出すのが遅くなり、「HIV・エイズに関する動画史」シリーズで「いかに道徳がHIV対策の障害となっているのか」を説明してからの方がいいかということになって、いよいよ遅くなってしまいました。その後の話も加えてます。「おっぱい募金」反対署名については一生言い続けてやる。

 

 

 

現実を直視するイベント

 

vivanon_sentenceドキュメンタリー映画「売り専ボーイズ」を観ただけでなく、GiantGirlsのメンバーたちの話を聴いただけでなく、休憩時間に中村うさぎ編『エッチなお仕事なぜいけないの?』の件を知っただけでなく、TOKYO AIDS WEEKS 2017では他にも多くのことを知り、多くのことを考えました。

 

 

中野区役所の巨大レッドリボン

 

 

楽しい局面もたくさんありました。GiantGirlsのメンバーと都内観光もしました。吉原とか山谷とか。

しかし、「充実したイベントだった。あー、楽しかった」では済まないのです。今だってエイズを克服できているわけではありません。世界中で感染する人、亡くなる人たちが多数います。日本においても。こういったイベントに来るたび、亡くなった知人たちのことを考えないではいられない人たちもいるでしょう。

そして、今も闘い続けている人たちが世界各国に多数います。病気だけでなく、スティグマや差別と闘い続けている人たちが多数います。微力ながら私も闘っているつもりです。

その現実を直視しなければならないのもTOKYO AIDS WEEKS 2017なのです。

 

 

甦る怒り

 

vivanon_sentence是非、以下の記事をお読みください。

 

 

 

 

 

会場となった公園は、「同性愛者はエイズを撒き散らす」「子供たちがエイズで死ぬ」といった、偏見に満ちたプラカードを持ったパレード反対派に取り囲まれた。プラカード片手に自分の子どもに「あいつらは気持ち悪い、殺してしまえばいいのに」と差別感情を吹き込む母親を見かけて、背筋が凍る思いをした。

 

 

やがてパレードが通りに繰り出したが、反対派はパレードに並走して参加者を罵倒し続けた。中には「再び4.3事件を起こさないためにも、こんなことはやめろ」とがなりたてる人もいた。

「4.3事件」とは、韓国軍・警察が1948年から1954年まで、共産主義者の武装闘争を鎮圧する過程で当時の人口の1割にあたる3万人を虐殺したという悲劇的な事件だ。虐殺には西北青年団というキリスト教系極右団体が加担した。同じクリスチャンが4.3事件の虐殺を持ち出すことは、性的マイノリティのみならず島の人々の心をひどく傷つけることに他ならない。

地元出身の25歳の男性は「歴史的経緯でクリスチャンが少ない」「クリスチャンであっても、地元の人ならあんなことは絶対に言わない、陸地(韓国本土)から来たやつに違いない」「済州島で4.3事件を粗末に扱うことは絶対に許されない」「お前らをまた虐殺してやると宣言したもの同然」と激怒していた。

 

 

パレードに反対する人々は「エイズ患者の9割は男性同性愛者」「“同性愛祭り”を許可した済州市は青少年エイズ拡散の原因」「島民感情と性的倫理を崩壊させる同性愛クィア集会に反対する」などと書かれたプラカードを持って沿道に沿ってパレードを追走し、参加者に罵声を浴びせかけ続けた。

 

 

ソウルのクィア・パレードを思い出し、怒りで震えそうです。

 

 

道徳は怖い

 

vivanon_sentence宗教のすべて、キリスト教のすべてがそうであるはずがないですけど、「アジア編 6/病気を道徳に利用する人々—HIV・エイズに関する動画史[11]」で台湾人の彼が言っていたように、「宗教は怖い」と改めて思います。

戦争は人を殺すことを正当化します。宗教も同じ。

韓国でも日本でも、キリスト教の中で闘っている人たちがいます。私の知人にも複数います。その人たちには敬意を払えますし、応援もします。その困難さは絶筆に尽くしがたいものがあります。

これは韓国だけの問題ではありません。台湾でもそう。東南アジアでもそうです。ロシアや東ヨーロッパでは正教が同じように病気を利用する。イスラム教も同じ。中国では宗教ではないですが、政府が弾圧してくる。

そして日本でもクリスチャンに限らず、道徳派が足を引っ張るのです。

※平良愛香牧師は立教大の講師でもあり、先日行われた要友紀子SWASH代表の講演会にも来てました。気づかないだけで、ゲイは誰の周りにもいます。セックスワーカーも元セックスワーカーも周りにいるのです。

 

 

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