間違いが撤回されない事情—本当に児童生徒の読解力は落ちているのか?[5]-(松沢呉一) -3,340文字-
「大人だって熟読し、調べ、考えることを放棄してはいけない—本当に児童生徒の読解力は落ちているのか?[4]」の続きです。
間違った場合の対処
「児童生徒の読解力」についての話が長くなってしまいましたが、もとに戻します。池内恵が誤読を指摘したらあちこちから叩かれたって話。
慌てやすい時代においては間違いが起きやすい。SNSがその筆頭。間違いをしてしまったら、その旨の説明をして撤回すればいいだけ。誰しも間違いはあるんだから。ところが、それをしない人たちが少なくないのです。
SNSで知人に「間違っているよ」と教えると、多くの人は説明を加えて文章を直したり、削除したりします。私も間違えた時はそうします。
TwitterからFacebookに移動してからは、電車の中でスマホで書き込みをすることはやめましたし(今はスマホを持ち歩くこともほとんどないのですが)、シェアする場合は必ずコメントをつけるように自分に課しているため、元の文章もより慎重に読むようになっており、ひどい間違いをしたことはほとんどなくなって、固有名詞を間違えたり、数字を間違えたりしたくらい。この場合は編集しておしまい。
あるいは言葉が足りなかったために補足をすることがあるくらい。これも編集するか追記をしておしまい。
内容は忘れましたが、Twitterではひどい間違いをしたことが二度ほどあって、謝罪と事情説明をして削除したはず。ただ消しただけだと、それを読んだ人がそのまま信じ続ける可能性があるので、間違えた旨を知らせるのが適切かと思います。Facebookではよく間違っている旨を加筆してそのまま残すという方法をとる人もいて、あれも適切です。
メッセージなどで伝えるよりも、間違いを広く知らせる意味で、公開で指摘した方がいい。
一部の人たちは注意しても返事はないまま、黙って修正をしたり、削除をします。不十分ではあっても、何もしないよりはマシ。
問題は無視をする人たちです。一切反応はなく、投稿をそのまま放置する。本人としては恥ずかしいので「なかったことにする」ということだと思いますが、なかったことになっていないのです。今も恥を晒している状態です。
デマを削除しない人
間違いをなかなか認めない存在としてはマスコミが挙げられます。
たとえば本に著作権侵害があってもなかなか認めない。批判が高まってきたら渋々認める。出てすぐ絶版や回収となると大損です。認めるとしても先延ばしにして、その間に少しでも売りたいってことでしょうし、担当者としては責任問題になるので、できることならなかったことにしたい。
だったら事前にそういうことがないように丁寧に作ればいいのですが、とくに昨今はそれができにくいのは前回書いた通り。いくら丁寧に作ったところで、すべてのパクリを見抜くことは無理であり、そもそも編集者は著者を疑う習性があまりありません。著者を信頼するしかないのです。著者に同化することが仕事みたいなところもあるのですけど、それが過剰な編集者もいて、問題を指摘されても著者側に立つために対応が遅れるということもありそうです。
このように金がからむといよいよ認めにくい事情は一定理解できるのですけど、SNSの間違いだったらすぐに認めてもよさそうです。しかし、そうならない人たちがいます。
最近も話題になってましたが、以下のデマの元を発信した人は、今でも当該のツイートを残しています。5年経っているのに。
これだけ指摘されても一切反応をせず、削除もしない。意見の相違、解釈の違いというものではなくて、事実についてですから、はっきり白黒はつき、これについてはすでにデマ確定でしょう。
もしこのツイートに確信があるなら、自分で確かめて追加の情報を出すなりなんなりすればいいのに、それもない。この場合は調べたら間違いに気づくだけでしょうが。
気づいてないはずはなくて、元のツイートにRTでデマ指摘が多数なされていますが、一切無視して、これに騙された人たちだけを相手にしてます。図太い。
Facebookであれば編集が可能ですが、Twitterの場合はそれだけが一人歩きするため、削除するしかない。それをしないため、いまだこのツイートを信じて拡散する人がいるのです。あまりに無責任です。こういうものについては運営が対処すべきではなかろうか。
事実より人間関係
なぜこのような態度がとれるのか理解不能ですけど、無理矢理その心理を推測してみましょう。
(残り 1689文字/全文: 3612文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ