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松沢呉一のビバノン・ライフ

大人だって熟読し、調べ、考えることを放棄してはいけない—本当に児童生徒の読解力は落ちているのか?[4]-(松沢呉一) -3,405文字-

2018年01月13日10時02分 カテゴリ:メディアインターネットメディアリテラシー連載児童生徒の読解力は落ちているのか?


読解力が劣化しているとは言えないが、情報は確実に劣化する—本当に児童生徒の読解力は落ちているのか?[3]」の続きです。

 

 

 

BuzzFeedもこの流れに参入

 

vivanon_sentenceちょうど昨日、BuzzFeedでこんな記事が出てました

 

 

 

 

新井紀子教授はこのジャンルの第一人者として引っ張りだこの様子。

ここでは「科学的に確認できていない私見」という注釈つきであり、その点は慎重。その条件のもとでここで語られている話は別段問題はなく、エロ小説を子どもがこっそり見られるところに置くなど、同意できる点もあるのですけど、結局、「デジタルより印刷物」と受け取れる流れになっています。デジタル・メディア自身がそれをやる。

合っているならいいんだけれど、あれだけのデータを集めながら、このことは確認できていない。この言い方だと今後確認できるかのようですけど、このままいくら継続しようとも、相当に無理な解釈を持ち込まないと今後も確認できないのではなかろうか。

なぜかと言うと、あの調査はノイズが多過ぎて、そのノイズによって、誤答率が高くなった可能性が大きいからです。文章読解力があり、勉強ができる生徒ほど多数の問題に答えようと奮起して、正答数が増えつつ、誤答も増える可能性が高い。正答率の高い生徒は知識によって高くなった可能性もあります。

比較対照として、同じ設問で「30分以内に10問に答えなさい」という条件でテストをやって、どのくらいの差が出るのかを見極めるべきです。そこに大きな差が生じたら、誤答を減らす方法は「落ち着くこと」「時間をかけて考えること」であることがわかり、どんなメディアを通した情報でも慌てると間違えるのだから、時間をかけて考えながら読み、調べ、考えることが必要という方向の知恵が出てくるはずです。

新聞を読んでいる大人でもひとつひとつ自分の頭を使って考える人はおかしな点に気づける。疑う姿勢のない人はいくら新聞を読んでも同じです。これは個人の能力に左右されると同時に環境に左右されますから、電車の中や仕事の合間に新聞やSNSを読んでいる時には誤読が生じやすい。もともと間違いの多いネットでは間違いをより信じやすい。

もちろん、これも可能性に過ぎませんが、ここで新井教授が言っていることも同じく可能性なのです。どっちも現状同じ価値しかない。

 

 

結局は「最近の若いモンは」の変形

 

vivanon_sentenceメディアを含めて、こういう方向を歓迎している人たちが多いのではないかと疑えます。「最近の若いモンは」ってやつです。自分の世代より下の世代が劣っていると安心できる人たちもいるでしょうし、何か若い世代に違和感を覚えている人たちは、それに対する説明が欲しい。「自分が歳をとった」というもっともあり得る理由を見ないで済む逃げ場が欲しい。

事実、そこに何らかの変化が起きているのかもしれないのだから、そこを調査するのはいいとして、推測は推測、可能性は可能性、事実は事実として見ていかないとまずい。

よくあることですが、メディアの担当記者はプレスリリースか何かをつまんだだけで、正しく調査内容を読めていないケースもあるのではないかとも疑います。あるいは正しく把握しつつ、「読解力が落ちている」とした方が読者の食いつきがいいと判断したのか。

以前書いた「最近の子どもは味覚がわからなくなっている」という話でも、研究者と報道が合体して、「そんなことねえだろ。他の解釈の方がずっとあり得るだろ」と突っ込まないではいられないところに結論をもっていき、視聴者もそれに安易に乗ってしまっていたように、「最近の子どもは」「最近の若いモンは」という方向の話題は無批判に受け入れられます。

こういう話題は疑うべし。自分の中にそちらに流れそうになる要素があるからこそ私は疑います。

※SSはBuzzFeedより

 

 

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