松沢呉一のビバノン・ライフ

毎日セックスするためには—カレシとセフレと仕事の境界線[上]-[ビバノン循環湯 357] (松沢呉一) -3,313文字-

HIV・エイズに関する動画史」で避妊領域に進んでますが、結局これは個人の選択に委ねられる問題かと思います。個人が選択できるようにするためにはそれ相応の知識が必要であり、だから性教育は必須。人口抑制策をとっているエリアでは、ただ公共広告をやっているだけではなくて、政府機関やさまざまな団体が啓発のための活動をし、相談を受け、アドバイスをする窓口を作っています。

それぞれの方法にはそれぞれのメリット、デメリットがあって、性行動も考え方も違いますから、一律に正しいと言える方法はありません。

現実に日本でも避妊と感染症予防をそれぞれの立場で使い分けている人たちがいて、そのことをまとめた原稿がなんかあったなと思って検索したら、今回の原稿が出てきました。避妊の話は次回です。これは十年以上前に一部のみネットに出したものですが、長くまとめたものは、メルマガ購読者用限定のevernoteに出したのが最初です。

図版は国産のコンドームでまとめてみました。

 

 

 

「セカンド・ラバー」のマヌケさ

 

vivanon_sentence以前、雑誌に「セカンド・ラバー」という言葉が出てきて、いかにも「セカンド・ヴァージン」のような流行語にしようとしていることが見え見えのイヤーな印象をもった。

これは「セックス・フレンド」のことである。しかし、セフレと恋人とは全然違う。恋人の代理でもない。恋人とはまた違う関係を指す言葉なのだ。

今時の子らって、カレシとは別にセフレがいても、二股とは思っていなかったりする。また、特定のカレシはいなくてもセフレはいるということもあるのだから、「セカンド」という言い方もおかしい。

今時のセックスのあり方を全然理解しちゃおらん人がでっち上げた言葉であることがモロバレなのである。こういう人たちは、「彼氏がいても、それとは別に男の友だちがいる」ということを矛盾なく受け入れているくせに、「彼氏とは別に、それとは別にセックスをする友だちがいる」という事態を受け入れられず、それを「彼氏の代用」として無理矢理解釈しようとしているのだ。

私自身、セックスしている相手が複数いる時期があっても、恋人が複数いるとは全然思っておらず、恋人は一人もいないと言っていい(全部を恋人と呼んでも別にいいんだけどさ)。ただ、セックスをする友だちが複数いるというだけのことである。

しばしば私はこういう存在を「遊び友だち」だの「ダチ」だのと言っている(遊び友だちやダチだからってセックスしているとは限らないのは言うまでもない)。セフレを「ヤリ友」と呼ぶ人たちもいるが、友だちとセックスをする時代には、この方が「セカンド・ラバー」なんて言い方よりも、ずっと実相に近い。つうか、セフレでいいではないか。

「マスタベーション」「ひとりエッチ」といった言葉同様に、「センカド・ラヴァーズ」なんて言葉を使用するメディアの人たちって、なんかこの社会の実相とズレたところで生活していて、なのに、この社会で行われていることを無理矢理、自分のフィールドに引き込んで解釈しようとするために、とんちんかんなことになっているような気がしてならない。

※「世界第二位のメーカー・アンセルのCM」で取り上げたSKYNは、日本では不二ラテックスが出しているのですね。知らんかった。

 

 

私、セフレがいっぱいいるんだ

 

vivanon_sentenceでは、時代とズレまくっている方々のために、現実を見せていくとしよう。

先日、体験取材で会ったマットヘルスのコとプレイのあとで交わした会話。

「セックスが好きそうだよな」

「わかった? 大好きだよ。毎日セックスしていたい」

「店でこれだけやっていてもか」

「それとこれとは別。だって、お店ではセックスまではしないじゃん。入れないエッチも好きだけど、それとは別にセックスは毎日していたい」

「だったら、ソープに行けばいいのに。マットは同じなんだしさ」

「それも考えることはあるんだけど、仕事になるとつまらない。それに、気に入ったお客さんとだったら、セックスしてもいいけど、そうじゃないと人とはそこまでしたくない。気持ちよくないもん。だって、気持ちがいいからセックスが好きなんだよ」

「そりゃそうだ。じゃあ、カレシとは毎日しているのか」

「してない。カレシとは気持ちでつながっているから、セックスのことって、あんまり話せないんだよね。“エッチが大好き”とか“毎日セックスしたい”なんて絶対に言えない」

「そういうのがよくいるよね。カレシは好きだけど、セックスは楽しめないって」

「そうそう。気持ちが入っているから、カレシとのセックスも気持ちいいんだけど、それだけだと満たされないものが残るんだよ」

「欲求不満か」

「いや、そうでもない。これって絶対書いちゃダメだよ。私、セフレがいっぱいいるんだ」

 

 

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