松沢呉一のビバノン・ライフ

コンドームをつけさせてくれない看護師—カレシとセフレと仕事の境界線[下]-[ビバノン循環湯 359] (松沢呉一) -2,431文字-

仕事は生・カレシとはコンドーム—カレシとセフレと仕事の境界線[中]」の続きです。

 

 

 

風俗嬢は仕事以外で妊娠率が高まる可能性

 

vivanon_sentenceある性感ヘルスの店長がこうボヤいていたことがある。

「うちの店では、月に一回平均で店のコが妊娠しているんですよ。結婚しているコや結婚を前提にしているカレシがいるコは産むこともありますけど、そうじゃないと堕ろすしかない。どっちしても、そのあとしばらくは働けなくなるから、店としては困ってしまうんですよ。いくらセックスしてもいいので、避妊はして欲しい」

この話には驚いた。こんな話をいちいち店に報告しないのもいるだろうから、体調が悪くて休むというだけで妊娠したと決めつけているだけではないかと思うのだが、月に一回が誇張した数字ではないのだとしたら、在籍者の多いこの店でも、三年在籍していると一回は妊娠することになる計算だ。実際には同じ人間が繰り返すことがありそうなので、そんなことが起きないグループにはいつまでも起きないのだと思うのだけれど。

しかし、ここで「店の客と生本番して妊娠している」「風俗嬢は誰とでも生でしまくって妊娠している」と誤解しないでいただきたい。

この店は拙著『60分ロマンス』に掲載された「堕胎前夜」の舞台である。体験取材をした際に、相手のコの体調が悪く、彼女は「実は明日中絶手術をする」と告白。こんなことしている場合じゃないだろと思ったのだが、彼女は大丈夫だと言い、私も締切があるので、いまさらキャンセルもできず、そのままプレイをしたって話である。

このコは短大生で、友だちと一緒にこの店で働いていて、カレシもおり、そのカレシと「気をつけていたのに妊娠した」と言っていた。排卵日を把握していて、それ以外は生でしていたのに、周期が変化したために妊娠したとか、膣内で精子が生存している日数をカウントしていなかったというミスは時々聞く。

一般にはこういう話を無闇に人に言わないためにわからないだけとも言えるのだけれど、いろんな男とセックスをして、どこの誰かもわからない相手によって妊娠するのではなく、彼女のようにカレシと生でセックスして妊娠してしまうのが風俗嬢には多い印象がある。前回出てきた例もそうだ。カレシとだったら大丈夫と思う。仕事上では気をつけているのに、これでは元も子もない。

店では生でフェラをしたり、素股をするため、いくら気をつけていても、STDの感染を完全に防ぐことは難しい。相手の性器チェックを怠らず、洗浄も怠らないことによって、何年も働いていて、一度として感染した経験がないのも珍しくはないのだけれど、明日感染しない保証はない。そのため、検査に行くし、異常があればすぐに病院に行くため、早期に治療することが可能。

その条件のもとで、他と差別化してカレシを特別な存在にしておくため、カレシとは生で挿入をして、中出しを許してしまう。あるいは自ら求めてしまう。「仕事の事情」と「気持ち」がこれを招くのだ。

一般にも「好きな人だから」で妊娠したり、STDに感染することはままあるのだけれど、そうなる過程が風俗嬢の場合は少し違っているかもしれない。

ニューミチコロンドン

 

 

コンドームしても妊娠しそう

 

vivanon_sentenceいいことではないにせよ、ここまで書いてきた事情はまだしも理解はできる。

しかし、理解しにくい不思議な感覚をもっているコがいた。今は連絡がとれないが、時々遊んでいたダチっ子である。

 

 

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