松沢呉一のビバノン・ライフ

老眼は根性で克服できる—女子大生がヤバイ![上]- (松沢呉一) -2,474文字-

セフレつながりで、「コンドームをつけさせてくれない看護師—カレシとセフレと仕事の境界線[下]」の最後に加えようと思って書き出したら長くなりすぎたので、独立させました。

 

 

 

老眼鏡なしでも本が読める秘訣

 

vivanon_sentence老眼が進行してきて、老眼鏡なしでは本を読めなくなってきた十年ほど前、老眼鏡を出したりしまったりが億劫で、電車の中で本を読まなくなりました。

近眼用の眼鏡だったらかけっぱなしでいいのですが、老眼は近いものだけピントが合わなくなるため、かけたままだと全部がボケます。とくに電車の乗り換えがあると、眼鏡を外してケースに入れ、また取り出して、ちょっと読み始めたらすぐにケースにしまって下車して、ということになります。それでも老眼鏡を持ってきていればいいのですが、私の場合、なんでもすぐに忘れるので、そうなるとお手上げです。

しかし、老眼がさらに進行するとともに、老眼鏡がなくても本が読めるようになります。そのため、今はまた銭湯に行く時に本をよく読んでます。帰りは湯疲れで寝ることも多いですけど。

老眼自体は元に戻らないのですが、勘で読めるようになるんです。人に言っても信じてもらえないのですけど、ホントの話です。『老眼は勘で克服できる』って本でも出したい。「老眼は根性で克服できる」の方がわかりやすいか。

そのため、誤読が増えている可能性も大いにあって、誤読しても困らないものを読むようにしています。新書が最適。

2009年に出たものなので、ちょっと古いのですけど、先日、小沢章友著『女子大生がヤバイ!』(新潮新書)を読んでました。

女学校が戦後女子大になっていったことを考えると、いまなお良妻賢母主義がここには残っていて、直接にそれを教えていないのだとしても、政治学や法学ではなく、家政学や文学、外国語が圧倒的に強いことを見ると、戦前の女学校教育がなお維持されていると言えましょう。そのことが学生にどう反映されているのかを確認したい。

現役女子大生の知人は長らく風俗嬢ばっかりだったし、今はそんなことはなくても、現役女子大生の知り合い自体が少なくて、全体像は見えない。そこでこういう本でも読んでみるかと思って読み始めたら、セフレの話が出てきました。よし。何がよしかわからんけど、電車の中でそう思いました。

 

 

創作から見えてくる意識

 

vivanon_sentence著者は東京郊外にある女子大で非常勤講師をやっていて、「文章創作」の授業を受け持っています。具体的には小説を書く授業であり、そこで提出された作品を中心にこの本は書かれています。

創作なので、そこに書かれた物語が学生の生活そのものとは限らないでしょうが、ふだんそれが外からわかるように表出されていなくても、書かれた意識は本人のものに近いはずです。自分の中にない意識は取材を経ない限りなかなか書けないですから、その範囲では今の女子大生のリアルな意識が書かれていると言えます。

ただ、この著者にはちょっと問題があります。そこに書かれた意識ではなく、物語が本人のものであると見ようとする傾向があるのです。帯に「本当の私は誰も知らない……」「フツーの女子大生たちの生の本音」とあるように、おそらくこれは編集者からの要請でもありましょう。女子大生の生態がわかるかのようなコピーであり、そういうものとしてまとめて欲しいと言われたのではなかろうか。

創作物であることを前提にして、「昨今の女子大生はこんな想像をしている」「こんな欲望が潜在している」とするより、現実を書いた本なのだと見せかけた方が確実に売れます。私もそういうものを期待して買ってしまいました。

しかし、「売るため」以前に著者はそういう傾向があるようで、「本当にこんなことをしているのか」と詮索し、時には学生に実体験かどうかを確認しています。フィクションの前提を覆すことをやってしまっているのです。

講師に聞かれて本当のことを言うとは思えないですから、本当かどうか知りたいとしても、この詮索は意味がない。

 

 

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