国家が個人の下半身に踏み込む道筋を作り出す—スウェーデンの法改正[7](最終回)-(松沢呉一)-2,987文字-
「買春処罰はセックスワーカーの負担を増大させた—スウェーデンの法改正[6]」の続きです。
現実が答を出しているのに無視する人々
中国のHIVとセックスワークについての報告書にもあったように、人権を最優先にするなら、非犯罪化が望ましいことは明らかです。これを妨害するのは人権より道徳や秩序を重んじる人たちです。
買春処罰にしたところで解決はしません。北欧諸国での調査が明らかにしているようにセックスワーカーの負担を増やし、暴力に晒しています。ヨーロッパのセックスワーカーの諸団体も、アジアの諸団体も、アムネスティもこれに反対をしているのに、推進する人たちはそれを聞こうともしない。セックスワーカーの意見など聞く必要がない、つまりセックスワークをするような人間は道徳や秩序の犠牲になればいいと願っている人たちです。神近市子のような人間が至るところにいるわけです。
これは因果関係がはっきりしないのですが、スウェーデンではセックスワーカーがパートナーに殺害される事件も起きていて、買春処罰によって犯罪者となった客の相手をし、それを守ろうとするセックスワーカーに対する蔑視が強まっているためとも言われています。スティグマの強化です。スティグマという言葉をも愚弄する神原元弁護士には決して理解できないでしょうけどね。
※ストックホルムのスポットは昼間の撮影ばかりです。インドアビューでクラブの中に入れないかと思って探したのですが、それも見当たらず。このSSは隣国オスロ港から見た夜景です。
ひとたびできた法律にすがりつく人々
結局のところ、買春処罰なるものは、売買春を蔑視する者たちが、セックスワーカー蔑視が思うままにはできなくなってきた昨今、別の形で追い込む新手の差別法であり、すでに施行した国ではその撤廃が適切なのですが、メンツもあるし、生活もあるしで、推進した側は決してミスを認めない。「生活」というのは、これによってメシを食う人たちが出てくるってことです。
日本においても、売防法によって婦人相談所が設置され、その役割を終えてもなお食い扶持を確保するために、兼松左知子がはっちゃきになってその役割が現在もあるかのように見せかけた本を出すように、買春処罰によって今度は買春する側の更正を図り、カウンセリングをする団体に金が流れる。この人たちはそこにしがみつく。まさに、こういう人たちがこれまでの反省などまったくないまま、買春処罰に動いています。
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