松沢呉一のビバノン・ライフ

売買春の禁止がHIVを広げ、人権を侵害する—中国のHIVとセックスワークについての報告書(上)-(松沢呉一)-2,278文字-

 

法規制がもたらすもの

 

vivanon_sentence以下は、昨年公開された中国のHIVとセックスワーカーの現状を報告するレポートです。

 

 

 

 

自動翻訳でも相当まで理解できますので、英語が苦手な方も一読していただきたい。なぜセックスワークの非犯罪化が求められるのかがリアルにわかります。それでもなお売買春を犯罪にしたい人たちがどういう人たちかの想像もしやすくなります。

女性セックスワーカー517人を対象にしたアンケート調査を実施し、さらに74名のインタビューを実施した結果をまとめたのがこの報告書です。実施したのはTingting ShenとJoanne Csete。Tingting Shenはニューヨークに本部があるAsia Catalystに所属し、Joanne Cseteコロンビア大学メイルマン公衆衛生学部の准教授。両者とも健康と人権をテーマに研究をしている女性です。

いちいち性別を書きたくないのですが、中味を判断する能力が欠落しているので、「男だから信用できない」と決めつける「性別信奉者」が湧いてくるものですから。

 

 

セックスワークが犯罪になるとHIVの感染経路になる

 

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この調査では、事実に基づいて、セックスワークを禁止する法律が人権侵害を進めるとともにHIVの感染を促進していることが指摘されています。

中国全体で言うと、感染率は低い。しかしながら、ドラッグユーザー、MSM(男とセックスをする男)、セックスワーカーでは高い感染率が見られます。

女性セックスワーカーの感染率は、2014年の政府の統計では、0.22パーセントに過ぎないのですが、一般女性の数字よりも高い。正確な把握はできないながら、中国におけるセックスワーカーは数百万人に達すると言われており、0.22パーセントだとしても数千という単位が感染していることになります。

また、トランスジェンダーの女性は感染率が高く、瀋陽で220名を調査したところ、25.9パーセントが感染していたとの報告もあると書かれています。

※香港を除く中国はストリートビューが使えない。スポットがあるだけです。路上を撮影するのに当局の許可は不要だと思うのですが、まだ手が回ってないとも思えず、なんらかの規制がありそう。スポットの多くは昼間に観光地で撮影したもので、夜の風景は北京では探せず、SSは上海です。

 

 

セックスワーカーたちはコンドームを所持できない

 

vivanon_sentenceこの原因になっているのはコンドームが使いにくいことにあります。コンドームの所持は売春をしていることの証拠になるためです。正確にはこれだけで売春をしていた証拠になるはずはなく、中国でもそうなのですが、状況証拠のひとつにはなり、また、取り調べる必要があるか否かの判断に影響を及ぼします。

 

 

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