松沢呉一のビバノン・ライフ

選別されることでの均質性—勘で読んだ辛酸なめ子著『女子校育ち』(4)(松沢呉一)-3,220文字-

女子校に意味を見出す女子校出身者—勘で読んだ辛酸なめ子著『女子校育ち』(3)」の続きです。

 

 

 

女子校出身であることの意味ってあるのか?

 

vivanon_sentenceとくに私は学歴に興味がない方なのかもしれないと思うのですが、そんな私からすると、女子校出身者には共通の特徴があると言われても、「ホントかよ」と眉に唾をつけたくなります。

小学校から大学まで同じ学校に通っていたとなればなにがしかの影響は受けると思いますが、たかが中高くらいで、のちのちまで残るもんですかね。

卒業時にはその先の進路がおおむね決定しているわけですから、人生の何分の一かはこの時に決定すると言えて、重要な時期ではありますが、それは共学でも同じです。

それを超えて人格にまで影響するほどの違いが共学と別学の差にあるのかなあ。ただそう思えているだけで、思えていること自体に特性がある以上の何かがあるのだとしたら、選別の結果でしょう。

※四谷の雙葉は時々前を通ります。お嬢様系かつ偏差値高い系ですが、雙葉はゴリゴリに厳しい感じではなさそう。

 

 

「女子校の特色は選別の結果」説

 

vivanon_sentenceそう簡単には「女子校出身者には共通する特性がある」「女子校出身者は女子校出身者がわかる」という話に乗っかれないのですが、それがあるとの前提で考えていくと、選別の効果がもっとも大きな要因になっていそうです。

そもそも貧乏な家の子は私立小学・中学の入学金も払えない。貧乏というほどじゃなくても、家が遠いと定期代だってもったいないわさ。

ヘリコプターはないにしても、松涛に大きな庭のある豪邸に住んでいる生徒、買えば億に達するような港区の高層マンションに住んでいる生徒、高層ではなくても全部を所有している文京区のマンションの最上階に住んでいる生徒、ハワイに別荘を持っている生徒、親の車に運転手がついている生徒、自動引き落としの口座に残金がなくて家の電話が止められた経験のない生徒が集まっているわけです。

そういう学校に行っている親がどういう人たちなのか想像がつきにくくて、これ以上、上流階級の人たちの具体例が挙げられませんが、そういう家庭の子どもは、苦労を知らない分、性格がおっとりしていて、ガツガツしていない。その時点で共通項があります。

現実に、男でもそういう環境で育ったのは、別学、共学を問わず、ある特性があります。問題点もあるにせよ、細かいことを気にせず、人がいい。攻撃性が薄いのです。

その上、中高一貫の女学校って、どうせ家庭の審査があったりするわけでしょ。いくら金を積んだところで、親が組の構成員だとか、逮捕歴があるとか、エロライターをやっているとかははじかれる。あるいは親が立派でも、また、本人がいかに成績がよくても、小学校時代に万引きの常習犯でもダメでしょ。授業にすぐに退屈して外ばかり見ている子もダメでしょ。

そんなことまで調べられるかどうか知らないけれど、学校推薦も必要だったりするんじゃないですかね。

※Googleストリートビューより豊島岡女子学園。高速から見たところ。

 

 

next_vivanon

(残り 2022文字/全文: 3313文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ