松沢呉一のビバノン・ライフ

安倍昭恵を見てなお別学教育を肯定できるか?—勘で読んだ辛酸なめ子著『女子校育ち』(6)-(松沢呉一)-3,465文字-

良妻賢母主義は生きている—勘で読んだ辛酸なめ子著『女子校育ち』(5)」の続きです。

 

 

 

純潔教育も生きている!!

 

vivanon_sentence一部の女子校では、いかに社会と隔絶した教育がなされているのかを実感していただけるように、辛酸なめ子著『女子校育ち』からさらに引用してみます。

 

 

女子校によっては、世の中に異性など存在しないかのような純潔教育を押しつける学校もあります。白百合では万年処女のシスターが異性交遊を厳しくチェック。登下校中近くの男子校の生徒と一緒に歩いている生徒がいないか目を光らせ、もし見つけたら尾行して後で始末書を書かせたり、文化祭では暗くなると男子に向けて早く帰るように校内放送したりと、異性交遊の芽をつぶすのに躍起になっているようです。神と結婚し処女のまま枯れていくシスターたちにとっては、色気づいた女生徒など見るも汚らわしい罪の生き物なのです。性教育は年に一回、「あんなので何がわかるんだろう…」(白百合出身・R子さん)というレベル。子どもがどうやってできるのかさえ詳しく教えてもらえず、とにかく堕胎はいかに罪かということばかり重点的に刷り込まれたそうです。それも、嬰児が頭を万力で砕かれるトラウマものの映像で、泣いてしまう子もいたとか。性についての話題はタブー感が強かったため、級友同士、生理になったことすら隠していて、生理用品の貸し借りもなかったそうです。一般的にイメージされる女子校の光景で、夏場、股を開いてスカートの中に風を送ったり、生理用品を個室の仕切り越しに投げ貸し借りする、というものがありますが、禁欲的なカトリックのお嬢様学校になるほどそんな場面は皆無なのです。

 

 

今なお純潔教育が生きているのか!! もちろん、こんな教育をしている学校はほんの一部でしょうけど、ほんの一部であっても現存するのが怖い。

神と結婚し処女のまま枯れていくシスターたちにとっては、色気づいた女生徒など見るも汚らわしい罪の生き物なのです」という点に、抑圧された者は他者を抑圧する法則が神の名のもとに現出しております。

つい最近も隠れゲイの議員が同性愛者の足を引っ張る動きを見せているという話を聞いたところです。その議員はバレていないと信じているかもしれないですが、過去の行動はすっかりお見通し。

米国であればアウティングされているところですし、私も公人であること、同性愛者を抑圧する側に立ったことの二点において、アウティングしていい例だと思うのですが、日本ではなかなか支持を得られないでしょうから、どうしたもんかというところです。

 

 

同窓会の役割

 

vivanon_sentenceここでお嬢様女子校の卒業生が現役の生徒たちの監視をしていることを思い出します。抑圧された者は他者を抑圧する法則がここでも生きています。卒業生の使命は「集団の均質性を保つこと」にあります。それこそがムラの平安です。親もたいていそういう人たちですから、抑圧は脈々と継承されていきます。

だから、森律子が女優になったことで、跡見女学校の同窓会から除名する動きがあったわけです。女優はすでに蔑視される職業ではなくなってますけど、AVに出たとあれば、今でも除名にする学校がありそうです。除名されたらネタにできてラッキーと私だったら思いますけど、それが怖い人たちもたぶんいるんでしょう。強烈なムラですから。

地図を見ていて気づいたんですけど、同窓会が地図上に記載されている女子校がチラホラあります。大学では同窓会がしっかりしていて会館等を運営している場合がありますが、共学の高校、男子校をいくつか見たところ、同窓会が地図上に記載されている例は見当たりませんでした。女子校特有と言ってよさそうです(そう断定するにはもっと調べた方がいいですが)。

 

 

長きにわたって影響するかもしれない例

 

vivanon_sentence辛酸なめ子著『女子校育ち』を読んで、あまりに特殊な教育をしている女子校があることを知って、「学校でのちのちまで影響する人格が形成される」との説に懐疑的な私も、もともとその資質がある層が集まっている上に、思春期にこんな教育を受けたら、そのあとずっとおかしくもなるわなと思いました。とくにこの時期に学ぶべき性の領域では影響が大きいでしょう。

ここまでひどくなくても、均一性の高い集団が閉鎖的な空間で教育を受けることにはつねにリスクがあることを認識しておきたいものです。

おかしくなった一例は安倍昭恵です。安倍昭恵は白百合じゃなくて聖心女子学院出身ですが、似たようなもんでしょ。

大学ではなく聖心専門学校に進んだように、はじけた時期もあったようですが、お嬢様の教育を受けたことの影響が今も色濃く残っています。

「あの人、ヘン」と思う点は家庭とともに学校に養われたものである可能性が高いと思われます。共学に行っていてもヘンだった可能性はありますが、あそこまでヘンにはならなかったのではなかろうか。知らんけど。

 

 

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