松沢呉一のビバノン・ライフ

夜会服と長い手袋—山田五郎は手袋フェチ-[ビバノン循環湯 379]-(松沢呉一) -2,607文字-

「スナイパー」の連載です。

 

 

手袋フェチの山田五郎

 

vivanon_sentence世の中にはホントにいろんな人がいます。

テレビによく出ている山田五郎は『100万人のお尻学』なんて本を出しているくらいで、お尻が好きなことで知られますが、実は二の腕も好きです。春になって温かくなると、だんだん腕が露出してきます。一年を通して、その時期が一番好きなんだそうです。

また、長い手袋も好きだと言ってました。海外の映画で、舞踏会に出席する女性がしているような手袋です。

山田五郎があのタイプの手袋が好きなのは、腕の先を隠すことで、二の腕が強調されるためです。刺青のある人と銭湯で出会っても怖くないのに、袖の下からチラッと見える刺青は怖いようなものでしょうか。二の腕がもっとも露出する真夏ではなく、見えるか見えないかの春先が好きということにも通じます。

変わってますでしょ。この国で、一体どこに行けば、あんな手袋をしている人に会えるのでしょうね。迎賓館かしら。たまに女王様ではしているのがいますが、だいたいは撮影の時の衣装であって、プレイ中は透明の手袋にお色直しします。そのうち、透明の手袋のフェチも登場しそうですが、あの手の夜会服の伝統があるヨーロッパには手袋フェチが少なくないようです。二の腕が好きなのではなくて、純然たる手袋フェチです。

※「Evening gloves」 服飾コレクションが充実しているメトロポリタン美術館には手袋のコレクションも多数あります。長い手袋というと、レースのついた黒い手袋をイメージしてしまいますが、コレクションされているのは革製が多い。その方が保存されやすかったとの事情もあるかもしれないですが、実際に革製が多かったのだろうと思います。

 

 

イスタンブールの売春宿での経験

 

vivanon_sentence昭和二十年代に「青春生活」(双夢社)という雑誌が出てました。東郷青児、北條誠、源氏鶏太といったメンツが書いていて、カストリ雑誌というよりも、大衆文芸誌と言った方がよさそうです。

全部で十号も出ていないのではないかと思うのですが、この雑誌の昭和二四年十一月号(第一巻第四号)を読んでいたら、吉良運平「港港に美人あり」という記事が出てました。

筆者のプロフィールはよくわからないのですが、新聞記者あるいは外交官として、戦前から戦中にかけて海外に赴任していた人物ようで、この前々号の九月号ではリスボンのことを書いていて、この原稿がすごく面白い。

長くなるので、そちらは省略して、十一月号には「港港に女あり」の二回目として「イスタンプール夜話」が掲載されています。これもいい話です。

イスタンブールには、法律で認められた下級と中級の娼家があり、それとは別に秘密厳守の高級娼婦がいました。こちらは外国人専用で、イスタンブールに行った時に著者は、知人に連れられてここで遊んでいます。

※「Gloves

 

 

手袋に興奮する老ドイツ人

 

vivanon_sentenceイエニポスタネという場所にある豪華な娼家に着いて、マダムに知人がなにやら話をして、しばらくすると、ギリシア人の美女二人がやってきます。どこからから電話で呼ぶシステムのようです。

 

 

next_vivanon

(残り 1382文字/全文: 2709文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ