松沢呉一のビバノン・ライフ

HT系JK(偏差値高い系女子校)が社会を変える—男女別学肯定論を検討する/第三部(3)-(松沢呉一)-2,789文字-

専攻による男女偏在はなお克服できず—男女別学肯定論を検討する/第三部(2)」の続きです。

 

 

 

進路決定のバイアスを除けばいいだけ

 

vivanon_sentence前回出した数字から見て、大学の進路、あるいはその先の進路に男女の片寄りがあるのは、進路決定のプロセスに原因があることは間違いがない。

一般には、同じ能力があっても、女子は文系になんとなく力を入れて、文学部をなんとなく選択してしまう。「なんとなく」と書くと何も考えてないみたいですが、考えて考えて考え抜いても、社会の規範から逃れられないのです。

男子だったら、「おまえは理系の方が向いているだろ」「文学部は就職に不利だぞ」と教師に言われるのに、女子だと誰からも言われない。仮に本人が政治に興味があって、政治学部を目指しているとしても、共学では教師や男子から「なんで文学じゃなくて政治なの?」といちいち言われる。

それを克服しようと奮闘し、見事に結果を出しているのが「偏差値高い系」女子校です。

早稲田に合格する女子の中には、これら「偏差値高い系」女子校の卒業生が混じっているわけですから、それらを除いた共学校における女子の文学部系指向はもっと強く、社会科学系学部や理工学部指向はもっと弱いことになります。

共学こそ、そのバイアスを改善しないと、大学の専攻における男女差は変わらない。

改めて偏差値高い系女子校こそが社会を変革していると実感します。その成果を最近聞きました。

 

 

性別と採用の関係

 

vivanon_sentence女子大と銭湯は生き残れるのか?—日本の女性議員率 11」で数字を確認したように、着々と政治・経済・法律を専攻する女子学生が増えていることが就職にも反映されています。

総合出版社だったら文学部の女子学生が入る余地はあるでしょう。女性誌や文学セクションに配属すればいい。一般の雑誌や単行本のセクションでも活躍できる余地がいっぱいあります。

しかし、政治・経済・法律関係の出版物を中心に出している出版社もあって、そういう会社では、総務等は別として、編集者要員を採用する場合は政治・経済・法律を専攻していた学生を優先せざるを得ません。書店営業だって、本の中味がわからないと仕事にならない。よって女子大出身は採用の対象にならない(京都女子大法学部を除く)。共学でも文学部では対象になりにくい。

その結果、かつては男子の応募が圧倒的に多く、それに伴って採用も男子が多かったのが、昨今は女子の応募が増えていて、優秀な学生を採用する結果、女子の方が多くなるケースも出てきているらしいですよ。そのタイプの出版社の知人が言ってました。

「ビバノン」でも取り上げた「偏差値高い系」女子校出身で「偏差値高い系」大学の法学部卒がその中にはしっかり混じっています。

※写真がないので、今回も早大西早稲田キャンパスより。今はどうか知らないですが、私が学生の頃は、「早大の設計はミスが多い」ともっぱらの評判で、この建物も設計ミスで傾いているらしい。

 

 

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