松沢呉一のビバノン・ライフ

バイアグラの次に求められる薬—セックスで拘束する男-[ビバノン循環湯 390] (松沢呉一)-3,595文字-

文中の記述からすると、1998年に書いたものと思われます。何に書いたか不明。「URECCO」あたりかな。図版はインド製バイアグラのジェネリックが中心です(正確にはジェネリックではなく、法律の違いによるコピー商品とすべきものらしい)。

 

 

 

回数自慢は十代まで

 

vivanon_sentence高校生の頃は、一日何回センズリしたかを自慢し合ったものだ。他人に言わずとも、自分の能力を追求するために、夏休みにエロ本を買ってきて(今ならビデオかな)、「よし、今日はやるぞ」と心に決め、朝から晩までセンズリするなんてこともあった。私の場合は七回が最高だったと記憶する。

やがてセックスをするようになってから、私は一球入魂派に転向し、自分の射精回数よりも、一回のセックスでどれだけ相手に満足してもらうかに労力を費やす流派に転じたため、セックスで回数を試したり、それを誇ったりする感覚がまったくないままこの歳になった。

一方、セックス・ステージに進んでも回数にこだわるヤツはとことんこだわる。回数派は彼らなりのポリシーを見いだしているものらしい。

あるいは、何度も繰り返しやらないではいられないくらいに性欲過多の人もいて、どっか病気なんじゃないかとも思うのだが、三十代になっても一日二回なり三回なり射精しないでいられない人もいる。本人にその話を聞いたことがあるのだが、彼は会社のトイレでも必ずと言っていいほどオナニーをしている。

 

 

絶倫の男

 

vivanon_sentence先日、こんな話を教えてくれのがいる。

「前に結婚しようと思っていた相手がいるの。そのとき、私はまだ十八歳で、その人は三十四歳。十六歳も年上だったんだよ。下手すりゃ親子だよね」

彼女は現在二十三歳。五年前の話である。私と彼女は十七歳違うから、もっと親子の関係である。

「その人は、ずっと一人暮らしをしてきたから、人と一緒に暮らすのが苦手で、結婚もしたくないって主義だったんだけど、私のことは気に入ってくれて、“君とだったら一緒にいても苦じゃない”というので、一緒に住み始めたのね。そのうち“結婚しよう”ってプロポーズされて。結婚をしたいと思った相手も私が初めてだって言っていた。私もその気になって、相手のお母さんにも紹介されて、このまま結婚するんだと信じていたんだけどね」

その男は自分で店をやっていて、比較的、時間が自由になるため、昼休みを利用して、毎日うちに帰ってくる。当時、彼女は午後からのアルバイトをしていて、一緒に昼飯を食べてから出勤。

「この人が精力絶倫で、朝起きて、まず一回セックスをする。それから昼に帰ってきて、食事のあとでもう一回。夜は互いに何があっても十二時までに帰る約束になっていて、それからまたセックスをするから、一日必ず三回していたんだよ。それが一年くらい続いたかな」

私はここで質問しないではいられなくなった。

「あのさ、話の途中で悪いけど、セックスするたびに彼は射精しているわけ?」

「もちろん。いつも外で出していたから、間違いないよ」

信じられない。中学生の頃でも私には無理だ。

「最初は愛されていると錯覚できたんだけど、私の体が辛くなったのね。私もセックスは好きだけど、いくら好きでも、一日三回はきついよ。“三回するより、内容の濃い二回の方がいい”って話をして、一日二回にしてもらって、昼のセックスはなくなった」

それでもまだ十分過剰。

「夜の十二時に帰ってきて、お風呂に入ったり、食事をしたりして、それから充実したセックスをすると、睡眠が足りなくなっちゃう。朝はやっぱりセックスだからさ」

寝不足は男も同様のはずで、性欲だけじゃなく、体力もあるのだろう。

インド製のバイアグラのジェネリック

 

 

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