松沢呉一のビバノン・ライフ

女性議員率を低く抑えてきたのは国民の意識—日本の女性議員率 17(最終回)-(松沢呉一)-3,074文字-

婦人参政権獲得の歴史を再確認—日本の女性議員率 16」の続きです。

 

 

 

男にも女にも理念がなかったこの国

 

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18世紀からヨーロッパのいくつかの国では宗教教育が排斥され、追い出された人々が日本にやってきて女学校を始め、そういった女学校から発展した現在の女子校(女子大を含む)とがどうつながっているのかどうかまでは確認していないですが、今なお純潔教育をやっている学校が存在するわけですよ。日本の婦人運動が大好きだったエレン・ケイも宗教教育に反対していたにもかかわらず(先日エレン・ケイをまた読んでいて、その文章を私が宗教臭く感じるのは神といった言葉がよく出てくるからですが、その神は既存の宗教のそれではなくて、新しい神を造るべきという考え方に基づいていることがやっとわかりました。わかりにくいんじゃ、あの人の文章は)。

日本的陋習から脱するためにキリスト教にすがったのは理解できるし、そうすることの効用も現にあったでしょうけど、宗教教育、宗教道徳にあまりに警戒心がない人たちが多すぎではなかろうか。その結果、内面化した道徳にあっさり依拠してしまう。

また、キリスト教系じゃない女子校の中には今なお良妻賢母教育をやっている学校があります。女子大も「女らしい教育」「女に向いた教育」を続けてきました。ストレートにそうは教えてなくても専攻がそう雄弁に語っています。

しかし、時代の変化によって、急速に女子大は凋落しています。行く必然性が薄くなってきた。また、女子校も成績重視に転じた学校ではすでに純潔教育や良妻賢母教育に執着していません。これとて10年20年という単位の時間がかかってますが、さらに10年20年で女子大は消滅していくでしょう。ラッキー。

ラッキーと言えばアッキーですが、女子校もおそらく成績重視の学校が残っていって、安倍昭恵みたいなのを増産している女子校は今度経営が厳しくなって欲しいものです。ただ、こういう学校に入れてしまう親が今もいるわけですよ。うちの娘は汚れて欲しくないとか考える親が。

娘がどういう学校に進学するのかは家庭で決定すればいいことですから、「ご自由」にってことですけど、すでに数字を確認したように、今でも夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」と考える人たちが諸外国よりずっと多い。この数字が減らない限り、女性議員率が伸びても、4人に1くらいのところで頭打ちになるのではないか。

※たまたま通りかかった女子高に貼り出されていた合格実績。全然知らない高校で、あとでネットで確認したら偏差値は50をちょっと切るくらい。特別進学コースというのがあって、そのコースの生徒から医大に入るのがいるようで、この貼紙の冒頭に出ている上智大合格者もそのコースかと思われますが、年に1人いるかどうかです。このくらいの女子高だと、女子大に進学するのがうんと増える印象で、その点で偏差値高い系女子高とは印象が大きく違います。

 

 

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