質が高くて値段が安い日本の女王様—女王様の価格(1)-(松沢呉一)-3,266文字-

2018年05月08日 18時09分　
カテゴリ： SMクラブ・SMバー • 中国(中华人民共和国) • 女王様の価格
タグ : MEGAMI • SM • パラフィリア • フリーの女王様 • ホモくん • 世界男女格差指数

SMのプレイ料金が安い日本

ちょっと前に、Facebookで以下の記事が流れてきました。

2018年3月10日付「ASIA TIMES」より

日本では女王様の料金が安いって内容。

これによると、シンガポールでは1時間800ドル(USドル。以下同)から1,000ドル、香港では2,500ドル、米国では250ドル、本格的な女王様だと700ドルから1,000ドル。対して日本では1時間で150ドル。

地域差もありますが、東京では60分16,000円から18,000円くらいですから、150ドルでだいたい合ってましょう。さらに割引があったりもしますから、たしかに安いっすよね。

女王様たちに聞くと、海外からの客が増加しています。以前から欧米やオーストラリアから日本に来て住んでいる人たちや出張、観光のついでに来る人たちはいたのですが、このところ増えているのはアジアです。とくに中国。

中国でも北京、上海には個人営業の女王様が出てきていますが、国外から来ている女王様が多く、それを含めても絶対数が少ない。理想の相手を探そうとすると海外でやるしかなく、その際に、他の国に行くよりも日本の女王様はクォリティが高くて安いってことがありそうです。

今まで聞いた一番好きな中国人客のエピソードは、「日本軍の女兵士になって生体実験して欲しい」とリクエストしてきたって話です。「日本軍に女兵士はいなかった」と説明したのですけど、それでもいいというので生体実験プレイをしたそうです。

ファンタジーですから、時代考証無視です。戦後間もない頃の日本のマゾたちのファンタジーでは、米軍の女兵士にいたぶられるというものがよくあって、似たようなものです。人間のエロは想像を超えます。

※SSは北京の女王様のサイト。彼女は中国人です。

男女格差があると値段が安くなるって本当か?

日本の性風俗産業を書いた海外の記事には的外れなものが少なくありません。記者のバイアスもあるし、取材に協力した人自身が理解していないまま、適当なことを語っていることもよくあります。とくに性風俗、セックスワークを否定したがる人たちは、国内においては「海外では〜」とデマを言い、海外に向けては「日本では〜」と平気でデマを言う虚言癖が多いのです。困ったもんです。

しかし、この記事は日本のSMシーンをちゃんと把握している人がコメントをしていて、露骨におかしなことは書かれてません。

ただし、のちに説明するように、誤読を導く記述はいくつかありますし、ラストのまとめが「どうなんか?」というものになっています。

In the World Gender Equality Ranking, Japan is listed 114th out of 144 countries. This may be why even the country’s mistresses aren’t really in control.

“Japan is a more male-dominated culture,” said Brame. “Even a pro dominatrix is perceived as someone who is expected to serve men, even when she’s whipping them.”

世界男女格差指数で、日本は144カ国中114位であり、このことが女王様の地位を低くしているのだと言っているように読めますが、これはさすがに無理があって、文中に、以前はプレイ料金は5万円からだったと指摘されています。かつての日本には男女格差がなく、それから女性の地位が3分の1に下落したなんてことは考えにくい。

この文章は、それが理由だと言っているのではなくて、「こういう日本では女王様さえも地位が低いのだ」という、皮肉っぽい修辞なのだろうと思います。

では、何がどうしてこうなったのかについてはとくに書かれていません。これを正確に分析するのは難しいのです。

しかし、そのヒントになりそうな指摘はなされていますので、そのヒントも頼りにしてまとめてみるとしましょう。本当は改めて調べて確認をした方がいいのですけど、ざっくりとしたことがわかればいいので、すべて私の頭の中にあるデータを使用します。

next_vivanon