店舗型から無店舗型へ—女王様の価格(4)-(松沢呉一)-3,295文字-
「SMクラブの料金推移—女王様の価格(3)」の続きです。
バブル崩壊以降
1990年代に入ってバブルがはじけ、中には金がなくなって、それどころじゃなくなった紳士たちもいたでしょうけど、SM業界はそれほど大きなダメージを受けたわけではありません。
この頃には大衆化が進んでいて、90年代は雑誌の数が増え、マーケットも維持されていたろうと思います。なお過当競争は進んでいて、店は増え続け、店が増えれば広告が増えるため、雑誌が増えたのは過当競争のためとも言えます。
そのため、90年代を通してみた時に、ひとつひとつの店や個人の売り上げは減少傾向にありました。
SMの店が増えただけじゃなく、たとえば言葉責めや医療プレイ、アナル調教、聖水のようなものを性感店やイメクラがすくいあげることによって、「本当はそれだけがやりたかった」という層はそちらに流れることにもなります。
本当は聖水を浴びたいだけなのに、今まではSMクラブに行くしかなかったわけです。延々ムチで叩かれたり、ロウソクを垂らされて、最後にやっとご褒美として聖水をいただける。それが聖水プレイを売りにしたイメクラが登場し、こちらは行けばすぐにいただけますし、それ用の透明便器があったりして、SMクラブよりも親切です。その上、値段も安い。
※V女王様のTwitter。彼女はロンドン在住ですが、中東にも出張しています。
SM料金とヘルス料金の接近
ヘルス業界がソフトSMに参入することで、軽い人たちをすくいあげる。M女はとくに技術はいらないし、S客にとってもウブな相手の方がいいということもあって、どちらかと言えばSMクラブのSコース(客がS)に影響があったのではなかろうか。そっち方面は詳しくないので、わからないですが。
もうひとつ大きな影響は価格だろうと思います。ソフトなプレイで満足できるのであれば、料金体系がヘルスに揃ってしまったってことです。2000年頃には60分2万円の時代になっていたと記憶します。
本格的なSMクラブは道具が揃っていて、設備もあり、女王様には技術があることに売りがあり、なおいくらか高めの設定が可能ではありつつ、M女と違って、女王様は自身の体を酷使するわけではないため、Mコースは安く、「楽して稼げる」から「楽だけれど、そうは稼げない」という方向になっていきます。実際には覚えなければならないことが多く、危険が伴い、頭脳も使うので、決して楽ではないんですけどね。
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