松沢呉一のビバノン・ライフ

脳内海外を信奉する人々—裸の文脈(1)-(松沢呉一)-2,821文字-

 

 

脳内海外に頼る人々

 

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これまで「ビバノンライフ」では、虚構の海外を出してきて「海外ではこんなものは許されない」とデマこく人々を繰り返し批判してきました。

台湾の桃色・フランスのローズ-台北報告 雑談編 3」「ヨーロッパのコマーシャルはどうしてエロなのか-ろくでなし子再逮捕 [9]」「オランダのTVは夜9時以降は性器も挿入シーンも・・・権力批判と依存の関係 -ろくでなし子再逮捕 [10]」「他人の性癖を認めない日本の文化 … エロ話と性風俗産業の関係 -ろくでなし子再逮捕 補足編」「おっぱい募金を批判した人たちはキッシング・ブースに文句をつけるのか?」「現実を見ることもなく異常と言い出す異常—性差別とされるものの中身 6」「オランダのテレビクルーに気づかされたこと—オランダに学ぶ 1」「日本のセックス表現が暴力的に見えるわけ—オランダに学ぶ 2」「胃で話す人たち—オランダに学ぶ 3(最終回)」といったあたり。

最近では「SMクラブの料金推移—女王様の価格(3)」でも各国のTime Out誌が性風俗情報を掲載していることを軽く指摘しました。

「脳内の虚構より現実が大事」「虚偽を言うべきではない」という当たり前のことが通じない人たちがいます。とくに性にまつわるジャンルではなぜか虚構の方が優先される傾向があります。デマで彩られた遊廓の歴史を見れば一目瞭然。

そもそもインターネットの時代に、わかりゃしないと思って適当なことを平気で言える人たちは相当におかしい。それが虚構であるとわかっていてやっているんじゃなければ、海外は自分の頭の中にだけあると信じ切っているのでしょう。異常です。

昨今、このような愚劣な人々に対してすぐにツッコミが入り、その反証が挙げられるようになっているのは大変好ましい。

たとえば【「エロ雑誌が堂々と売られているのは日本だけ」という説を覆すパリのキオスクの画像】【路上駐車氏が見てきたドイツのエロ本販売事情。欧米は日本より厳しいというのは真っ赤な嘘でした。】などなど。

当たり前のことが当たり前になされるようになって、いい傾向です。

※SSは田亀源五郎のツイート

 

 

アクセスが稼げればデタラメOKってか

 

vivanon_sentence最近も外国人留学生を持ち出して、原宿のコンドマニアをdisった人がいましたね。これもすぐさまツッコミが入りました。

 

 

※今は後付けの言い逃れらしき文章を加えたヴァージョンになっています。

 

この外国人留学生が何人かわからないですけど、コンドームショップが存在しない国もあるでしょうから、これだけで虚偽とまでは言うまい。

しかし、以下に書いている通り、先進国のみならず、コンドームショップがある国はいくらでも存在していて、いたるところにコンドームショップが存在している国もあります。それも調べず、たった一人の反応だけで、それに普遍性があるかのようにこんな漫画を描くこと自体が間違ってます。

また、どこの国の留学生か問われて、「個人情報」と逃げた点を見ると、相当に怪しい。日本に1人しか留学生が来ていない国もあるかもしれないけれど、ほとんどの場合、国を出したところで、どこの誰か特定できるはずがないじゃないですか。

つうか、「外国人」だけでは何も言っていないに等しいですから、こういう場合は言われなくても国名を出すか、少なくとも「アジア」「北米」「イスラム圏」等のエリアくらいは書くってもんじゃないですかね。たとえば、私自身、オランダのテレビクルーに協力した際はそう書いていて、「外国からのテレビクルー」で済ませたら、意味がなくなります。

さらには、後付けで、子どもが中を見られると言ってますが、少なくとも原宿のコンドマニアは大きな広告で覆われていて、表通りから中はまったく見えませんから、ここも怪しい。ごまかすために次々と虚偽を打ち出しているとしか思えない。

怪しいことだらけでも自身の脳内海外と合致する人たちがこういうネタに食いつき、そういった低劣な人々を集めてアクセスが稼げれば嬉しいってことですね。

仮にコンドームが子どもに見えたとして何が悪いのかさっぱりわからねえ。性教育後進国の国民の考えることはさっぱりわからねえ。

※コンドマニアは今月移転していて、この写真の時点では営業してませんでした。

 

 

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