松沢呉一のビバノン・ライフ

マゾの苦悩—「人間探究」「あまとりあ」の悩み相談(中)-[ビバノン循環湯 392] (松沢呉一) -2,019文字-

自慰・同性愛・変態—「人間探究」「あまとりあ」の悩み相談(上)」の続きです。

 

 

 

男の小便を飲みたい

 

vivanon_sentence前回に続いて「人間探究」の悩み相談です。

人間探究」12号(昭和二六年五月発行)の「人性相談」のコーナーに、6ページにわたる手記が出ています。この手記が大変よくできています。小説のプロットみたいです。

相談者は二四歳の大学生です。十歳までは朝鮮にいて、ガキ大将は地元の少年たちをいじめます。それを見た彼は、少年たちをかばい、その代わり、ガキ大将にひどい目に遭わされます。正義感というよりも、自らいじめられる立場に自分を追い込んでいたとしか思えないと書いてます。

小学校の五年生の時に内地の学校に転校するのですが、ここでもいじめられます。それを見た教師が保護役として、力のある生徒を彼につけてくれます。そのため、彼はその大将に従うしかなく、やがては召使いのようになってしまいます。

小学校六年になる頃には、大将のペニスを口に入れたいとの空想が芽ばえ、そのまま尿を飲みたいとまで思うようになってました。彼はその衝動を抑えられず、大将が立ちションをしたあとで、こっそり小便のかかった草を持ち帰ってなめたり、大将のうちに行った時に、大将がオシッコしたあとの便器をなめたりしてました。前回と違って、急に不潔であることに気づいて嫌悪感に苛まれることはなかったみたい。

中学になってもこの妄想から離れられず、麻雀をやっていると、「台の下に入って小便を飲んでやれば、皆は中断することなく麻雀が続けられて喜ばれる」なんて考えます。

それまでは男に対する妄想を広げていたのですが、その頃から女性にも関心が向かうようになります。当時、四歳年上のお光という女性が同居していて、彼は彼女の便器になることを妄想し、遂には便器の中にお椀を措いてき、それで尿を採取して飲み干します。また、大便は彼女が入ったすぐあとで指ですくって舐めます。

 

 

空想の中ではお光さんは女王国の女王でした。私はお光さんを崇拝するあまり私一人では足らず、男という男を私の同類にしました。つまり、女王国は、女子専制国で男子はすべて女子の奴隷として、私がお光さんに仕えるように仕えている国です。女はすべて何人かの男奴隷を持っていて、すべての労働は男がするのです。そして婦人達は便所というものを知らず、催したら、奴隷達の口をひらかせて、その中に排泄するのです。便器ばかりではありません。痰壺は勿論奴隷の口が代用されますが、その外にも、腰掛けや足台には男の身体が奉仕するのです。子供を生んでも女丈が子供として育てられ男の子はすぐ国立の奴隷哺育所にやってしまう。そんな女の天国を空想もしました。

 

 

ダイナミック。これって沼正三が学生時代に投稿したものではないのかと思わないではいられません。年齢が二歳ほどズレてますが、このあとの描写を読むと、なおのこと、「アレレレ」という展開になります。

 

 

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