松沢呉一のビバノン・ライフ

BAN祭りを無視して刑事罰導入を狙う人々と人権を無視してワールドカップを政治利用したロシア—ネトウヨ春(夏)のBAN祭り[5] (松沢呉一)-3,189文字-

上品メディアは両論併記を無効化する—ネトウヨ春(夏)のBAN祭り[4]」の続きです。

 

 

 

BAN祭りの効果を見ようとしないメディアと弁護士

 

vivanon_sentenceヘイトスピーチ対策法の施行から2年ということで、「その効果を検証する」という記事がチラホラと出ています。

昨日はNHKがこんな記事を出してました。

 

 

これは自治体へのアンケートですから、この範囲で語るのはいいとして、このまとめ方はおかしくないか?

 

 

ヘイトスピーチの問題に詳しい師岡康子弁護士は「法律に具体的な定義や規制がないことで、対応が自治体まかせになっている現状がある。国が責任を持って指針を示し、罰則や規制など実効性のある対策が必要だ」と指摘してします。

(略)

ヘイトスピーチの問題に詳しい師岡康子弁護士は、解消法の施行後も差別的言動が続く現状について「解消法に規制や罰則がないことで、デモや街宣活動が続いたり、インターネット上の差別的投稿に歯止めがかからなかったりしている。こういう結果は残念だが現実を映し出している」と話しました。

そのうえで、「表現の自由との兼ね合い」や「ネット上での対応」など8割の自治体が解消法の下での課題を挙げたことを受け「表現の自由は大事だが、他の民族や国籍の人たちを人間として認めないことまで表現の自由として認められているわけではない。ドイツやEUでは深刻なヘイトスピーチを違法とするだけでなく犯罪としている。自治体が個別に判断することが難しいケースもあるので、日本でも国が具体的な定義や指針を示しより実効性のある対策を進めることが必要だ」と指摘しています。

 

 

たしかにデモや街宣活動は続いていますが、大規模なものはなくなって、特定のヘイターたちが繰り返しやっているだけです。根絶はできてないながら、公開の場でのヘイトスピーチ垂れ流しに対しては効果があったのです。これは直接法が機能したのではなくて、その前からのカウンターや裁判、反対機運の高まりなど、さまざまな理由があるわけですが、こういった現実は見ておくべきです。

さらに、「BAN祭り」以降の目覚ましい成果を無視すべきではない。自治体が「インターネット上の差別的内容に対応できない」としている中、ことによると、全自治体よりも効果のあることをハンJ民はやっているのではないか。

法の影響は自治体だけに及ぶものではありません。民事裁判にも影響するし、国民の意識にも影響します。その結果が出るには時間がかかる。そして、このあと説明していくようにハンJ民にも影響しているのです。

NHKは、この動きをちゃんと取り上げるべきです。上品メディアの限界はあるにせよ。だから、朝日新聞があのような記事を出したのは意義があって、それを否定するのはどうかと思うなあ。批判すべき点は批判すればいいのだけれど、上品メディアの問題は記者個人ではどうにもならんですよ。

この諸岡康子弁護士を私はまったく信用しておりません。最初から一貫して刑事罰導入を主張し、表現の自由も、法による萎縮効果も軽視している人物です。

どうしてこの人がこうも刑事罰を欲するのか、また、これに限らず、どうして一貫して都合の悪いことを無視し続けているのか、私には理解できません。

こういう時に通りのいい肩書き、通りのいい名前の人にまとめさせるのは上品メディアの常套手段ですが、このやり方はわたなべりんたろうの「レイシストカウンター」がやったことと変わらないと指摘しておきます。

※「存在しない方がよかったドキュメンタリー—厄介な「レイシストカウンター」批判 24」では名指しを避けましたが、あの映画では、カウンター活動がテーマのはずなのに、諸岡康子に処罰規程のある法を肯定的に語らせることで、カウンターがあたかもそのために存在しているかのように見せてました。カウンター参加者の中でも、少数とは言え、法規制反対、あるいは罰則規定のある法律反対という人たちがいたのに、存在しないかのごとし。両論併記してよ。しかも、あの映画はああも露骨な著作権侵害をやらかしていました。「身内」となると、それも見て見ぬふりをして映画に出演したり、トークイベントに協力した複数の弁護士がいたわけですよ。「身内」のやらかす著作権侵害にさえ意見が言えない弁護士が、萎縮効果がないかのように罰則付きヘイトスピーチ規制法制定に執着していることをよーく覚えておきましょう。なお、この映画に協力した弁護士の一人はこれが問題になってから、わたなべりんたろうの代理人になってます。どいつもこいつも。

※写真は下に出てくるレインボー・レース・キャンベーンの靴ひも。通販で買えます

 

 

ロシアとFIFAの不作為に抗議したプッシー・ライオット

 

vivanon_sentenceヨーロッパでも萎縮効果については問題視されていますし、とくに日本ではそうなりやすい。法の力が大きいためです。

プッシー・ライオットがピッチに乱入した行為に対しても、「試合中に選手や侵犯以外が入るのはルール違反」「サッカーに政治を持ち込むのはルール違反」で終わってしまう人が多い。どういう事情であれ、ルールに反してはいけないのだと。

今回の行動の背景についてはガーディアンのこの記事でよくまとめられています。

 

 

 

 

ロシアではプライドパレードはほとんどの地域で禁止されていて、強行すると暴行され、逮捕されます。

 

 

普段でも、レインボーフラッグを公道で出せば同じ扱いとなり、殺されかねない。男同士で手をつないで歩いているだけでも暴行される可能性があります。こういう国ですから、LGBTがリンチされる事件も多発しています。

そういった国でオリンピックを開くことに対する国際的な批判が高まったにもかかわらず、プーチンは対策をとらなかっただけでなく、法を改悪して、これらの批判に敵意で応えました。

プッシー・ライオットはこれに抗議するわけですが、これに対しても繰り返しの拘束がなされ、コサック(民兵)による暴力も加えられます。

 

 

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