松沢呉一のビバノン・ライフ

フランス人の笑顔・日本人の無表情—古い絵葉書[9]-[ビバノン循環湯 430] (松沢呉一)-2,047文字-

日仏の決定的な色の違い—古い絵葉書[8]」の続きです。

 

 

 

日本人の仏頂面

 

vivanon_sentenceここまで出てきた日本とフランスの絵葉書を比較して、もうひとつ気づくことがあります。表情です。フランスに比べて、日本の絵葉書は表情が乏しいのです。仏頂面と言いますか。

 

 

こちらのサイトより

 

これは手彩色ではなくて、印刷上の人工カラーです。昭和に入ってから出てきたものだと思います。「なんかイヤなことでもあったんか、出がけに犬のウンコでも踏んだんか」って表情です。

カメラが出てきて間もない頃だと露光時間が長かったため、笑うとブレてしまい、表情まで固定する必要がありましたが、これは幕末、あるいは明治初期までの話です。いわゆる古写真の頃。昭和に入ってなお表情を消す理由にはとうていなりません。

 

こちらのサイトより

 

納涼床です。明治のものだろうと思われます。中央右の芸妓は口元を隠して笑っているのかもしれないですが、両手を使ってますから、歯に詰まった和菓子の小豆カスを楊枝でとっているところか。

よーく見ていくと明治のものでも笑っているものはありますけど、数は少ない。

 

ことらのサイトより

 

「いわざる」役は笑っているようです。手で隠して口元を見られないから笑えているのかも。

 

 

フランス人の笑み

 

vivanon_sentenceもちろん、フランスのものでも表情のないものはありますが、その場合は意図して表情をつけてないように感じられます。無表情も表情。ここまで出してきたものを見てもおわかりのように、子どもでも表情をつけているのです。

20世紀初頭のフランスのものは例えば以下。

 

IMG_6814.jpg

 

すべてにおいて派手で鮮やかでしょ。

ちょうどこの頃、フランスではキャバレー文化が花開きます。ムーランルージュの時代です。フランスではキャバレーのダンサーたちがポストカードのモデルをやっていたようです。彼女もそうかな。パリに会いに行かなきゃ。年齢的にダンサーではないだろう人々もポストカードには出ているので、舞台俳優らもモデルになっていたのだろうと推測できますが。

 

 

時代が少しあとだと思いますが、これは映画女優って感じ。

スパイとして処刑されたマタ・ハリもまたポストカードのモデルをやっていて、ウィキペディアに出ている写真もおそらくポストカードでしょう。ポストカードは歴史を知る手がかりなのです。

なお、誰も聞いてくれないですが、FBで私のウォールに使っている写真はムーランルージュのダンサーたちです。そうもムーランルージュに思い入れがあるわけではなくて、横長なのでちょうどいいかなと思いまして。ダンサーたちも笑顔であります。

 

 

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