心の矯風会を抑えろ—ネトウヨ春(夏)のBAN祭り[10] (松沢呉一)-2,828文字-
「慎重なハンJ民と軽卒なTwitter民—ネトウヨ春(夏)のBAN祭り[9]」の続きです。
その後、全然チェックをしていないので、早くも内容が古くなってしまっているかもしれないですが、このまま続けます。
我が反省
前回見たハンJ民のコメントで、「余計な敵(特に外圧を嫌う表現規制反対界隈)を作る」という点も同意できます。
反レイシズムの動きの中で、オタク批判をしたのは完全にミスです。どうしてもそれが必要だったのならともあれ、必要ではないのに敵を作り出しました。個人の感覚で、その嫌悪を表明するのが数名いたならいざ知らず、束になってそれをやる必要はない。
このことによって、表現規制反対の人々を寄せつけなくなって、反レイシズムは表現を軽視する人々と見なされるようになったことは否定できません。私を筆頭にして、表現規制反対、少なくとも慎重な人々もいる、あるいはいたわけですが、残念ながらこちらの層は力がなさすぎて、少なくない人たちが距離を置いたり、離れる結果になったと思います。
私自身はそこに乗じていないですが、強く批判しなかった点について反省しています。わずかな数の人が批判したところで変わらなかったようにも思いますが。
ハンJ民がここまでの失敗を踏まえ、範囲を拡大することに慎重なのに対して、「裸祭り」では、萌え絵を差別表現と同等のものであるかのように扱うのが出てきたこともその流れにあって、失敗に対するケジメをつけられていないことがズルズルのだらしのない人たちを生み出していることを見て、もはや黙過できることではないと思いました。
今のところ、大きな動きになっていないのが幸いですが、早いうちに批判をしておくべきでしょう。
※台北地下街は、中野ブロードウェイの地下街版で、ゲーム、フィギア、漫画専門店、メイド喫茶が集中していて、萌え絵だらけ。店だけじゃなく、地下街自体(このエリアの商店会でしょう)が大量の萌え絵を使っています。ちょっとした壁があれば萌え絵。このことを知っていて、わざわざ行ったんじゃなくて、散歩中に地下に入ったらこんな世界が広がってました。でも、私はそっち方面に興味がないので、そのエリアでインド料理を食ってきただけです(この中にインド料理店がいくつかある。繁華街の中心部からちょっと離れているので、たぶん家賃が安く、オタク系の店も出店しやすかったのでしょう)。写真も何かに使おうとして撮ったわけじゃないんですけど、役に立てられてよかった。下の写真も同じ地下街。
戦線拡大は人を選別する
「しばき隊」以降の反レイシズムの動きに関わった人たちの中には、反ポルノ、反性風俗に簡単になびく人たちが少なくないのは事実です。その中には萌え絵が児童ポルノだとするような人たちがいるわけですよ。
世間一般にそうである傾向が持ち込まれているに過ぎないかもしれないけれど、反レイシズムに積極関与している弁護士の中で、「差別反対、表現を罰することにも反対、刑法175条撤廃」という主張を公にしている人を知らず、おそらくこの流れに関与するかどうかにおいて選別がなされているのだろうと思われます。刑法175条撤廃はともあれ、「差別反対、差別表現を罰することにも反対」という考えの弁護士は多いと思いますが、そういう人たちはここには乗れない。
一方、刑法175条に疑問を抱かず、むしろそのことを根拠にして罰則つきのヘイトスピーチ規制を求める弁護士は複数います。「わいせつ物頒布(175条)や公然わいせつ(174条)があるのだから、ヘイトスピーチ規制は表現の自由の侵害にならない」と主張する。
その一例は「山田太郎議員を支持する-ヘイトスピーチと法」でも取り上げました。個人的法益の法律と社会的公益の法律は、その質においてまったく違って、後者は危険性が高い(法益については「社会的法益と個人的法益-ヘイトスピーチと法 2」を参照のこと)。この発言者は弁護士ですから、その違いをわかっていてやっているとしか思えない。それをわかっていない一般の人々が騙されるであろうことを前提としている分、悪質です。
それよりはましとしても、刑法174条、刑法175条への疑問点をさんざん書いてきている私としては、これらの法の問題点をなかったことにするような人たちと手を組むことは無理です。
これでは警戒されても仕方がなく、「こんな人たちと一緒にはできない」と避ける人たちを生み出すのも当然です。刑法175条に疑問がある人、刑事罰導入に疑問がある人、性表現・性行動への規制に疑問がある人が差別に対抗することをやるのなら、これまでの動きと切断されたところから始めるべきだろうと思います。ハンJ民はこのまま、その勢力と一線を画し続けて欲しい。なんて言わなくてもそうするでしょう。
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