松沢呉一のビバノン・ライフ

なぜ虚偽を容認してきてしまったのか—自分が何者であるのかを正しく認識させる権利[中]-(松沢呉一)-2,619文字-

画期的判決—自分が何者であるのかを正しく認識させる権利[上]」の続きです。

 

 

 

この判決の意味するところは大きい

 

vivanon_sentence前回見た「現代ビジネス」の記事「「在日朝鮮人」と虚偽投稿…ヤフーに削除・慰謝料命じる判決の意味」では「こうした判断は裁判官の苦心の結果だろう」とありますが、原告側がそういう主張をしたのでしょう(判決文を探したのですが、見つからない)。原告自身か弁護士かどちらかわからないですが、誉め称えたい。それを認めた裁判官も誉め称えたい。

今まで「在日認定されても否定してはいけない」と言ってきた人たちにとって、この裁判はやってはいけないはずのことをやったため、話題にしにくいかもしれないけれど、これは本当に重要な意味合いをもっていて、今まで言ってきたことの間違いを認めた上で、この判決を活用した方がいいと思います。

社員が国籍や民族名を名乗ろうとしたら、会社が「やめろ」と命じてきたようなケース」は実際に起きていて、「在日は通名を名乗っているのはおかしい」と言う人たちがいる一方、使わせない事例があるのです。通名を使うと叩かれ、戸籍名を使おうとすると封じられ。どうしろと。

社員ではないですが、裁判も起きています。イルム裁判です。これ以外にもあったように思いますが、見つからない。記憶違いかも。

いずれにせよ、これまで認められなかった人格権が今回は認められたわけですから、同様の裁判があったら今後はスムーズに勝てる可能性がありそうです。今回の裁判では、偽りの名前や国籍、経歴を拡散されたことに人格権の侵害を認めているわけですが、それよりも職場や生活の場で戸籍名を名乗れないことの方が重大な権利侵害になろうかと思われます。「在日だから」ではなく、継続的であり、日常だからです。

で、こういう主張をする在日がいた時に、「戸籍名を名乗れない在日が辛いので、名乗るべきではない」なんて言わないですね。在日が戸籍名を名乗ることの権利は認められていた。今回の判決はそれをサポートするものです。

にもかかわらず、日本人が日本人であることの主張をしてはならないことにされていたことはおかしい。国籍を問わず、性別を問わず、出身地を問わず、人は自分が何者かを事実に沿って主張していいんです。

※『実録・レイシストをしばき隊』は送られてきていたのですが、受け取れないまま送り返されました。どうせわかっている話なので、まっ、いいかと。

 

 

いいことを言うのは私だった

 

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仙台地裁の判決に関連して、かつてFacebookに書いた投稿を読み直して(「資料編」参照)、私が書いたのは野間易通の一連のツイート(togetter「「在日認定」にどう答えるか」にまとめられている)を踏まえたものだとわかって、コメント欄に補足を書いたら意外な展開に。

 

 

 

 

 

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