文科省の姿勢は間違ってない—男女別学は差別か?[1]-(松沢呉一)-2,736文字-
文科省の姿勢は間違ってない
先日話を聞いた知人には、医師なり看護師なりにしかわからない細かな話も教えてもらいましたが、考え方としては私とそれほど違ってません。
文科省が「入試の募集要項に男女比の調整を明記していれば、大学の責任で実施できる。東京医大がそうした説明をしないまま調整をしていたなら問題だ」とコメントしたのは間違っていないという点でも同意見。差別、不正と言っていい採点がなされていることがわかったから、介入するしかなくなっただけのことです
もし定員を事前に発表していて、文科省が「その定員はどう決定したのかの根拠を出しなさい」と東京医科大に命じ、そこに差別といっていい内容が含まれていたら介入して直させるのが正しいとなると、男女不均衡な定員になっている都立高校にも同じことを言わなければならず、その不均衡の始まりである女子高にも、それに比して数は少ない男子校にも、東京女子医科大学を筆頭とした女子大にも、すべて同じ命令を出して、そのひとつひとつについて判断して指導することになります。
私らはそれに対して抵抗感なり警戒感なりがあります。そんなことになったら文科省の権限拡大であり、各学校の裁量の範囲を狭めて、自主性、独立性を奪うことになります。これはダメでしょ。だから、不公正な採点が行われている可能性が出てきた段階で初めて介入という文科省の姿勢は間違っていない。
こういう時にあっさり文科省の権限拡大を求める人たちが私は理解できません。「自分は差別に敏感なリベラル」と思っているかもしれないですが、中身はたんなる国家主義者だと思います。公的性質があるとは言えども教育の領域にもすべて国家が介入し、国の力をもって解決すべきなのだと。「女の社会的地位を向上させようとした国家主義者」については、これから「女言葉の一世紀」シリーズで長い文章を出しますので、そちらを読んで反省してください。
※東京医科大正門
疑問点だらけの論考
しかし、現に文科省が定員に介入すべきという主張をしている人たちが少なくないのです。
その一例。何をしているのかよう知らん独立行政法人経済産業研究所ってところのサイトに出ている以下の論については、Facebookで思い切り批判しました。
私は教育なんてジャンルは一般の人と同レベルの理解しかないですが、ずっと女学校について調べてきているのと、昨年から「日本の女性議員率」シリーズの流れで女子大を調べ、女子校を調べてきた経緯から、女子教育の周辺だけは詳しくなっていて、この一文を読んで「おかしいだろ」という点があまりに目につきました。
筆者の山口一男研究員は教育全体には詳しいのかもしれないですが、私が得意とする分野にはさほど詳しくなく、「差別とはなんぞや」についての理解もそうはないのではなかろうか。
詳細に批判していくと時間がいくらあっても足りないので、私の興味がある点に絞って改めて批判をすることにしました。それでも十分長くなりますので、覚悟しておいてください。
(残り 1647文字/全文: 2950文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ