松沢呉一のビバノン・ライフ

女子大のアドミッション・ポリシー—男女別学は差別か?[5]-(松沢呉一)-3,233文字-

女子工業高校と男子短大—男女別学は差別か?[4]」の続きです。

 

 

 

女子大のアドミッション・ポリシー

 

  vivanon_sentence私も最近まで知らなかったのですが、文科省のガイドラインによって、各大学は「ディプロマ・ポリシー」「カリキュラム・ポリシー」「アドミッション・ポリシー」を公開するようになってます。一部中高もアドミッション・ポリシーを公開しています。 ディプロマは学位のことで、学位授与の基準になる方針がディプロマ・ポリシーカリキュラム・ポリシーはそれに向けた教育方針。そして、アドミッション・ポリシーは大学がどのような生徒に入学して欲しいのかを示す「入学者の受け入れ方針」です。 今まで高校を選ぶ際の基準は、芸術だの農業だの工業だの商業だのといった専門分野で選ぶ人が一部いて、あとは偏差値や場所と公立か私立かくらいしか判断基準はなかったでしょう。 大学になると専門がはっきりしてきて、あとはやっぱり偏差値。色の強い大学だと、そのイメージで選択することもあるでしょうし、卒業後の就職や、卒業生の顔ぶれなどで選ぶ人もいるでしょうけど、圧倒的に専門と偏差値でしょう。 それに対してもっと明確なヴィジョンを見せるべしというのがこのみっつの方針の考え方です。これを読むと、その大学のいわば思想みたいなところまでを知ることができ、このみっつの方針はそれぞれに連携しているのですが、このところ私はアドミッション・ポリシーに絞って各大学のサイトを見てました。 以下は東京医科大医学科のアドミッション・ポリシー

   

ここではすべて「人」になってます。学校によってはこれが「人材」になっていたり。

※先日撮ってきた昼ヴァージョンの古めかしい表示。夜ヴァージョンはこちら

 

 

お茶の水大のアドミッション・ポリシー

 

  vivanon_sentenceとくに「女であることをどう位置づけているのか」を女子大のサイトで確認してまして、基本構造はだいたい同じです。内容も大差ないですけど、ここでは内容はどうでもよくて、性別の扱いです。 具体的に見ていきましょう。以下はお茶の水大学のアドミッションポリシーです。    

 

 

 

女性リーダーの育成」「すべての女性」「自立した女性」と女性が強調されています。これが女子大であることの必然性であり、差異主義的必然性と言っていいでしょう。男と女は違うのだから、女に特化して育てるのだということです。これは普遍主義の立場から言えば性差別です。普遍主義の立場じゃなくてもも性差別でしょう。性別で入学できたり、できなかったりするんですから。だから別学を廃止した国も多いのですが、普遍主義が弱い日本ではなお維持されている必然性です。

「本来男女は等しい。しかし、現に社会はそうなっていないため、ひとたび女子は女子としての学校で学ぶ必要がある」といった「偏差値高い系女子校」的解釈もあるでしょうけど、ここまで見てきたように、カリキュラムの内容だったり、韓国梨花女子大との比較だったりをすると、無理のある主張かと思います。それはまあいいとして。    

 

 

女子大の存在意義は女子大であること

 

  vivanon_sentence以下は武庫川女子大学のみっつのポリシー  

 

   

 

このようにだいたいどこの女子大も基本構造は同じ。「これこれこういう女性を求めているので、こういう女性に育てたい。だから、女子だけ募集」ということになってます。「女子大であるのは女子の学校だから」といった説明でしかないのですけど、それでいいわけです。   以下は津田塾大学のアドミッション・ポリシー  

 

 

  「オールラウンドな女性」つっても、総合大学にはなり切れず、数学科があることが女子大としては珍しいくらいで、伝統的に今も英語が強く、女子大らしさからは抜けられていません。 それでもよし。女子大であることは学校の裁量の範囲であり、専権事項です。    

 

 

日本女子体育大学はシンプル

 

  vivanon_sentence以下は日本女子体育大学のアドミッション・ポリシー

 

   

 

シンプル。当たり前のことしか言ってない気もしますが、体育会系ですから、御託を並べるのは得意ではなく、「体でわかれ」と。すべて「〜女性」で統一されています。    

 

 

東京女子医科大の切ないアドミッション・ポリシー

 

  vivanon_sentence以下は東京女子医科大学のアドミッション・ポリシーです。

 

     

 

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