恥を知らない人間の質問—人権と道徳の区別もできない弁護士(中)-[ビバノン循環湯 441] (松沢呉一) -2,916文字-
「決して私にしてはならない質問—人権と道徳の区別もできない弁護士(上)」の続きです。
では、自身はどうなのか
シンポジウムで、「あなたは自分の性を商品化したことがあるのですか」と質問をしてきた弁護士は「自分では性を商品化したこともない男が、商品化する側の気持ちもわからずに女の性の商品化を肯定している」なんて思い込んでいたに違いないが、残念でした。逆の効果しかもたらさないので、この質問は相手を選んだ方がよろしいかと存じます。
私はそんな個人の性的事情をいきなり人に聞いたりしないが、この弁護士は人にそれを聞いた以上、同じことを聞いてもなんら問題はないだろうう。
では、問う。あなたは当然性の商品化をしたことがあるのですね。
していないなら、性の商品化をする人たちの気持ちがわからないのだから、口出しする資格がないのでしょ? したことがないなら、エロ本で裸を晒してから出直せ。それがイヤなら二度とこの件について触れるな。一生黙ってろ。
当事者の発言は優先されるべきであり、それなしで空論を弄ぶべきではないと私は思っているが、自ら性の商品化をしていないと性の商品化についての意見を述べる資格がないなんて馬鹿げたことは考えていない。性の商品化を語る際に、自身の事情を晒さなければならないとも思わない。しかし、この弁護士はそう考えて、私に公開の場でそれを晒すことを求めたわけだ。そして、私はそれに真摯に応えたわけだ。であるなら、自身もその事情を晒すのは当然だろう。
※向って右はこのところのレットアンブレラ浸透作戦をリードするげいまきまき
どんな相手にもすべきではない質問
その弁護士の質問の二番目は「あなたの妻や母親が売春をしていても許せるか」というもの。あまりに低劣なので、この質問はどんな相手に対してもしない方がよろしい。
私は、妻や母親や娘の職業は、夫や息子や父親が許したり許さなかったりするものではないと思っている。せいぜい相談に乗れる程度だろう。うちの母の仕事について、私は許したことも許さなかったこともない。その弁護士に言わせると、私はいけない息子か。
マンコをナメたり、チンコをナメられたりする仕事を息子がするのはイヤかもしれないが、うちの親も私の仕事を許したり許さなかったりしたことはない。うちの一家は揃いも揃ってバカタレってことか。失礼な。
先日、神戸のソープ嬢にこんな話を聞いた。
「私がソープで働いていることを母に告白したら、母はこう言ったんです。“私も若い頃は赤線で働いていた”って」
彼女は母の仕事を軽蔑することはなく、母も娘の仕事を軽蔑しない。これはバカ母娘か?
うちの母が仮に赤線で働いていた過去があって、この私がその時の客の子どもだとしたって、いまさら怒りや悲しみなど感じまい。親に対する感謝は、こんなことで揺らぐはずもない。
それとも、その弁護士さんは、親が過去に売春していたなら、「軽蔑せよ、親子の縁を切れ」とでも言うんでありましょうか。
さあて、皆さん、一体どっちがどうにもならないバカタレでしょうか。
※ここでも「バカタレ」を使ってます。「バカタレは若い世代は使わない語彙説」については「契約は文書がなくても成立する—KaoRiとアラーキーの件から考えたこと(4)」を参照のこと。
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