松沢呉一のビバノン・ライフ

しゃべりすぎは警戒される—おしゃべりな奥様風俗嬢[下]-[ビバノン循環湯 444] (松沢呉一)-2,720文字-

店の秘密を次から次と—おしゃべりな奥様風俗嬢[上]」の続きです。

 

 

 

消えたナンバーワンと再会

 

vivanon_sentenceもう一人、おしゃべりな奥様の例。正確には元奥様だが。

よく遊びに行っていた池袋の人妻ホテルヘルスのナンバーワン、奈津さんが突然いなくなってしまった。

店では既婚ということになっていたが、彼女はバツイチの28歳。離婚を契機に風俗入りした。子どもはいないので、体はスリムでとてもきれい。顔も美形。

彼女もまたこの仕事のことを話す相手がいないそうで、ホントによくしゃべる。しゃべり好きの風俗嬢の中には、なかなかプレイにならず、延長するハメになることがある。それが毎回だと、「延長狙いか」と思えて、あまりいい気持ちはしない。

しかし、彼女はいくら話で盛り上がっても、自分から「ねえねえ、早くしようよ」とせかして、「時間がないからこのまましちゃおうよ」とシャワーを浴びずに即尺をしてくる。サービスとしてやっているのでなく、離婚をしてこの仕事をしたことによって解放されたみたいで、自身がしたいのだ。

「私、この歳になって、自分が本当にエッチが好きなんだってよくわかりました」

そのいやらしい言葉遣いや体の反応が私は気に入っていて、それだけに、2ヶ月ほど会いに行ってないうちに店を辞めていたのはショックだった。

聞けば間違いなく教えてくれただろうが、そうする機会がなくてアドレスや電話番号を聞いておらず、教えてもいなかったので、あちらも連絡ができなかっただけで、もし知っていたらきっと連絡してきたはずだと思える。連絡先を教えてなかったがための楽観かもしれないけれど。

出身は北海道で、離婚して以来、「実家に帰れ」と親がうるさいと言っていたので、てっきり実家に帰ったのだと思っていたのだが、それからしばらくして、別の店に移っていたことがわかった。渋谷である。

しばらくぶりで彼女に会いに行ったら、顔を見るなり、「うわー、どうしてわかったの?」と彼女はビックリしている。

客には誰にも教えていなかったため、誰一人前の店の客は来ていないそうだ。しかし、そこは蛇の道は蛇である。私の追跡から逃れられる者はいない。

「松沢さんだけには連絡したいと思っていたんだよ」と彼女は抱きついてきた。嘘かホントか知らないが、こういうセリフを口にしては私を喜ばせる彼女である。

「でも、連絡先を知らなかったから。聞いておけばよかったってホントに後悔していたんだから」

「オレも聞いておけばよかったと思ったよ」

「ホントかな」

「だから会いに来たんじゃないか」

「そっか」

「てっきり実家に帰ったかと思っていたよ」

「そうじゃなくてね、いろいろあったんだよ」

「なんだよ」

「いやー、それは言えない」

その事情は教えてくれないまま、久々にプレイ突入。この日も久々の会話で時間を使ってしまったので、シャワーは浴びず。彼女も私も汗かきだから、汗まみれになってしまった。

Servant, from the Occupations for Women series (N166) for Old Judge and Dogs Head Cigarettes

 

 

店長とともに池袋とお別れ

 

vivanon_sentence  グッタリした彼女を抱き締めていたら、彼女はこう言った。

「ねえ、絶対に秘密だよ」

「なんだよ」

 

 

next_vivanon

(残り 1393文字/全文: 2771文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ